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2025/12/01

あとがき。「天国に降る雪」

今日我われは知っている。




愛の反対は憎しみではない。

無関心である。

信頼の反対は傲慢ではない。

無関心である。




文化の反対は無知ではない。

無関心である。

芸術の反対は醜さではない。

無関心である。




平和の反対は、平和と戦争に対する無関心である。

無関心が悪なのである。

無関心は精神の牢獄であり、我われの魂の辱めなのだ。




人々の無関心は常に攻撃者の利益になることを忘れてはいけない。

エリ・ヴィーゼル（ヴィーゼル・エリエーゼル）

ノーベル平和賞受賞者・ボストン大学教授・ユダヤ人アメリカ作家




こんにちは、サヤキです。今回のあとがきはこの言葉からはじめます。

ずっと私が誤解していたのは、もの書きである以上「思想」からは誰も

逃れる事はできない、そう思っていました。




残念な事に、今はその考えが揺らいでいました。

「言葉」とは、伝達手段です。相手に伝える為にあるものです。

言葉を受ける人がそれをどう感じるか、それ無くしてモノは書けない。




そう思っていました。




ヴィーゼルさんは、ホロコースト（国家等の組織的大量虐殺）を受けた方です。

その体験を現在の思想に昇華させ今日に至ったと推測されます。

反論する人も含め、多くの人にとってその言葉が重いのは、それが理由です。




思想無き軽い言葉が氾濫していると、嘆くつもりはありません。

伝える事を意識せず、受ける人の事を考えない「言葉」が氾濫していると嘆く

つもりもありません。
 



感情を切り取るだけの文があってもかまわないと思っています。

その方がより多くの人の共感を得る事があるのも知っています。




私のこの作風は、どうすれば論文や小説にするような密度の濃い内容を、軽く

数分で誰もが読めるように出来るか、を模索して辿り着いたものです。

そして今回の作品は、実は凄く深い物を切り取って描いています。




ただ、「ものを書くとはいったい何だろう」とずっと考えながら書いていました。

「言葉」とはいったい何なんだろう、と悩みながら書いていました。




その考え悩んだ結果は、非常にシンプルなものでした。

私はこれまで通り、思想「思い想像する事」と言葉「伝える事」をあきらめない。

それでいいのだと、今では思っています。




上にご紹介したものの、全ての敵「無関心」を振り向かせる力が

「言葉」にはあると信じて。











 
写真提供：GATAG　著作者：Fleeting Glimpse

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[7回]

2014/02/02 詩　劇：広義の詩的形式の劇 Comment(0)

「天使の両翼」第八詩：邂逅と明日

この呪われた時の狭間で　

生まれて初めて神に祈った　




この命では足らなかった　

神を恨みながら祈った　




心が乾くのがわかる　

精神が蝕まれて　

壊れていくのがわかる　




失うのが怖かった　

消えゆくのが怖かった　

これ以上この痛みに　

もう耐えられなかった　




絶対の虚無が涎を流し　

全てを飲み込むべく　

舌なめずりを見せて　




心の奥底に牙を突き立て　

無慈悲に粉々に噛み砕く　

抗う力は残されなかった　




激しい焦燥が死を誘う　

追憶の甘い誘惑が　

意識を奈落の底へ誘う　




この命では足らなかった　

生まれて初めて祈った　

神を恨みながら祈った　




凄惨で残酷な　

この呪われた時の狭間で……









 
 
 
 
 
もう二度と　

来ないと思っていた　

何よりも大切な　

彼女との時間　




彼はこの望外の幸せを　

噛みしめながらも　

沈んだ声でついにあの時に　

言えなかった言葉を告白した　




｢ありがとう

でも駄目なんだ

手が施せないほど

もう僕の身体は……」




彼女は両手で

自分の顔を覆い

彼の不幸を嘆き

涙で頬を濡らした




やるせない気持ちに

心を痛めながらも

彼は努めて優しく

妻に声をかけた




｢だからもう僕の事は……」




彼の言葉はそこで止まった

涙を拭いながら

再び彼女が

彼を抱きしめたから




｢私は決めたの

あなたがたとえ死んでも

私はずっと

あなたのそばにいる




私は決めたの

あなたがたとえ去っても

私には子供がいるわ

私生きていける」




驚いて思わず彼は

妻の顔を覗き込んだ

彼女はにっこりと

夫に微笑みかける




｢そう

私とあなたの子よ」




まだ涙の残る顔で

悪戯っぽく笑う妻を

彼は呆然と眺めながら

うわ言の様に言った



 ｢馬鹿な……



君は子供を

子供を堕ろしていなかったのか」




彼女はその彼の反応を

楽しんでいるかの様に

幸せそうな表情を見せた

子供みたいな無垢な瞳で




｢あなたの身体と同じ

もう私も手遅れよ

産むしかないわね」




彼は絶句した

目の前の美しい妻を

固まった様に凝視しながら

やがて震える声で彼女に話しかけた



｢君はまだ若い

いくらでも

やりなおせるはずだろ

なのになぜそんな事を……」




再び彼女は

両手で優しく

彼の口をふさいだ




｢私もうすぐあなたを失うわ

だからせめて

あなたの子供と

一緒に生きていきたい




せめてあなたの子と一緒に」




彼はついに

その溢れる感情を

抑えることを諦めた




彼の大粒の涙が

愛する妻の手に

こぼれ落ちていく




｢君って人は

馬鹿だよ……

馬鹿なのは君の方だ」




今の彼にはもはや

その言葉だけで精一杯だった









無駄な遠回りをしてしまった









彼はそんな事を考えながら

再び手にした

この幸福に酔いしれている




そして二人は

再びお互いを強く

抱きしめ合った




彼の耳元で

彼女が優しくささやきかける




｢約束するわ

私と私達の子供は

もう決してあなたのそばから離れない」
















写真提供：skyseeker 様

[0回]

2014/01/19 詩　劇：広義の詩的形式の劇 Comment(0)