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- Newer : 「アルテミスの弓」第六詩:残された愛の為に
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Destination Station of a Dream
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アルテミスは矢を放ち
オリオンは愛する者の
矢に射られて死んだ
月と狩猟の女神が
オリオンの死を
知ったのは翌日に
彼の遺骸が浜辺に
打ち上げられてからだった
残された愛の為に
生きていこう
失われた世界の中で
あなたのいない世界の中で
贖罪と運命の重荷を背負って
それでも私は
生きていこう
たったひとつ
私に許される
残された愛の為に……
「決行は明日、例の宮殿の
裏手の通用門前にあの男が
謁見の為来た時を狙います」
夫の協力者の人は
それだけを私に告げ
逃げるように去った
私は妻なのだと言っても
なかなか協力者の人は
計画の内容を話さなかった
私は彼の妻でありながら
夫が生か死かという時に
祈る事すら出来ないのか
そう言うと渋々ながらも
とうとう教えて頂けた
その日の夜私は
一睡も出来なかった
私はそのまどろみの
中で固く決意していた
あの人を止めに行こう
私の事はかまわない
武人であるこの人と
一緒になったあの時に
もう覚悟は出来ていた
ただ残された子供は
簒奪者の娘かまたは
罪人の娘という汚名を
背負って生きる事になる
それだけならまだしも
今回の事で私達二人が
夫を失う事になったら
そう考えるだけで私は
恐ろしくて眠れなかった
夫の言いたい事は
痛い程理解している
西ゴート王国国王
アラリックがローマに
攻め入って略奪を行った時
抵抗するローマ人は皆無だった
それでも誰一人ローマが
この先どうなるのかを
考えようとしなかった
ほとんどの人がそれでも
この永遠のローマが
滅びるはずが無いと
信じて疑わないのだ
長き平和で豊かな時は
人々から考える事を
奪ってしまった
それでも私は思う
蛮人を無益に追求せんと
する者は自らを単に自国の
支配者たらしめるのみだが
蛮人の主人となり彼等を
保護しようとする者は
自らを全ての人々の
支配者とする事ができる
自己の価値観の固執に
付随する他者への否定
これがいつの世も国を
滅ぼしたと歴史は語る
無抵抗で滅びを待つか
抗って対立者を退けるか
何が正解なのか結局
私にはわからなかった
ただ私の中で揺ぎ無いのは
夫であるあなたを止める事
翌日の朝私は夫が
寝ているのを確認して
先に家を出て宮殿へ向かった
暗殺を行おうとしている
裏手の通用門の前で
愛する夫を待つのだ
答えなんてわからない
だからこそ私はあなたを
止めなくてはならない
裏手の通用門を探すのに
時間がかかってしまった
焦る気持ちに背を押され
ようやくその場にたどり着いた
まだ誰もいないようだわ
ここであの人を待とう
きっと私の前で夫は
人を殺せない
塀の向こうには
この門を見下ろせる
建物がいくつもあった
私を見知る夫の仲間も
この宮殿にはいる
私は顔をフードで隠し
通用門へと近付いた
そして次の瞬間
破滅を告げる角笛に
似た音を連れて突然
私の体を一本の矢が
刺し貫いていた……
素材提供:GATAG 画家:ローレンス・アルマ=タデマ(パブリックドメイン)
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2014/03/20 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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