忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/03/28

「想いは流れる」第八詩:優しい共犯者





その場の誰も僕に

何も言わなかった

ただ泣きながら

静かに微笑んでいた




それが僕を

いっそう苦しめた




ありがとうと言われた

何を言ってるんだろうと

はっきりしない頭の中で

そんな事を考えていた




誰も何も言わない

泣いているのに

それでも微笑んで

ありがとうと言った




それが僕を

いっそう苦しめた
 
 





 
 
 
 
 
 
僕たちは現在

なぜか電車に

乗っている




言い訳をしなければ

いけないと思うのだ

外に出た彼女は突然

海が見たいと言った




あの時見れなかった海を




気持ちはわからなくは

なかったのだけれど

当然僕は駄目だと言った




彼女は目を細めて

軽く微笑みながら

こんな事を言った




「歩いている方が体に

負担がかかるわよね

電車で行くのだから

その方が私は楽だわ」




そういう問題じゃ

無いだろうと僕は

もちろん反論した




すると彼女は

ますます目を細めて

僕を脅す作戦に出た




「私はこうして外に

もう出てしまった

あなたも共犯だね




私達もう、引き返せないのよっ」




なんて酷い話だ

騙されたのか僕




でも彼女の言葉に

反論は出来なかった

僕は確かに共犯だし




あまり彼女が歩くのを

見てはいられなかった




最初はあんなに

軽かった足取りが

数分でみじめに

引きずられていた




持っている肩掛けの

小さなバックですら

重そうに見えてしまう




座って景色を

眺めるだけの

電車の方が




賢い選択じゃ

ないかと思った




僕はもう既に

気付いていた

これが彼女の最後の

自由なのだという事に




なるべく彼女の

わがままを聞いて

あげようと僕は病院を

出る時に決めていたのだ




物凄く

怒られると

思うけれど




でも、目の前で

窓の外を眺めながら

子供のようにはしゃぐ

彼女の姿を見ていたら




そんな事は

どうでもいいと

その時の僕は

思ってしまった




やがて電車は

終点に着いた

海が見える小高い

自然に囲まれた山麓




駅のすぐ傍に

美しい森の間を

海へ向かって

川が流れていた




電車を降りて

彼女は木々の間に

ほんの少し見える

海をずっと眺めてた




本当はそこまで

君を連れて行って

あげたかったけど




帰りの電車代しか

僕の財布にはもう

残されてなかった




僕はそれを正直に

彼女に打ち明けて

君の気が済んだら

戻ろうかと言った




彼女はすぐには

答えなかった

そしてしばらくして

こんな事を僕に言った




「歩いて行けない

距離じゃなさそう




ね、行ってみない?」















写真提供:写真素材「足成」様

詩・ポエム ブログランキングへ
にほんブログ村 ポエムブログへ
にほんブログ村 ←良い記事と思って頂けた方、宜しければクリックお願いします

拍手[0回]

PR

2014/03/03 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

COMMENT

COMMENT FORM

NAME
MAIL
WEB
TITLE
COMMENT
PASSWORD

自己紹介とご案内
 
HN:
Sayaki
ご案内:
楽天Books と amazon にて
電子書籍を出版しています。
詳細はリンク下記でご紹介。
 
 
目次:最初から読む
 
 
 
記事紹介・RSS
.
ランクサイト トーナメント戦 優勝作品

「3年待ってね」

「天国に降る雪」

「想いは流れる」(短編)

「いつだって僕の」

「サン・ミシェルの少女」

「想いは流れる」(長編)

「粉雪と涙」

「君の歌が聞こえる」

「最後の言葉」

「天使の両翼」

「君の歌が聞こえる」(後書き)

「最後に見た景色」

「想いは流れる」(後書き)


「君の歌が聞こえる」は初めて

ブログ部門でも評価頂きました。
 
 

注目記事全国ランキング上位作品

「君の歌が聞こえる」9970人/1位

「3年待ってね」5478人/1位

「アルテミスの弓」6171人/1位

「サン.ミシェルの少女」5377人/1位

「珍しいペット」5365人/1位

「君の歌が聞こえる」5438人/2位

「夢も見ずに」5407人/2位

「消えていく私」5423人/2位

「戦争と平和と愛について」5356人/4位

「冥府に住む聖者」5362人/5位

「天国に降る雪」5351人/5位

「悠久の中の一瞬」5339人/5位

「欠片の記憶」5422人/9位

「消えていく世界の片隅で」6203人/9位

 
記事紹介
,,

小説を読もう!様にて

1000 アクセス達成済テキスト

「冥府に住む聖者」公開5日目

「天使の両翼」公開7日目

「天国に降る雪」公開8日目

「想いは流れる」公開6日目


1000 ユニークアクセス達成テキスト

「想いは流れる」公開11日目

「天使の両翼」公開34日目

「天国に降る雪」公開29日目

「冥府に住む聖者」公開36日目



約1ヶ月間で累計アクセスが

10000 を超えました

読んで下さった方感謝致します
 
 
 
カレンダー
 
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
 
 
Event

これまでの履歴

定期WEB演奏会の曲に詩を提供

デイリー大阪読書日報 様 
にて二作品紹介

「天使の両翼」

「天国に降る雪」


電子書籍出版C'lamP 様
にて五作品紹介

「オルフェウスの竪琴」

「その向こうに見たもの」

「無理に笑う人」

「夢も見ずに」

「四月になれば」



楽天Books電子書籍kobo

ブクログのPuboo にて

「天使の両翼」販売開始


楽天Books電子書籍kobo にて

「オルフェウスの竪琴」無料公開


楽天Books電子書籍kobo にて

「悠久の中の一瞬」短編集 販売開始
 
 

楽天Books電子書籍kobo にて

「君の歌が聞こえる」販売開始


楽天Books電子書籍kobo にて

「冥府に住む聖者」短編集 販売開始


amazon にて kindle版

「想いは流れる」販売開始


amazon にて kindle版

「悠久の中の一瞬」短編集 販売開始

 
カテゴリー
 
 
 
最新記事
 
(03/09)
(12/31)
(12/26)
(12/23)
(11/23)
 
 
目次:最初から読む