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2024/04/27

「想いは流れる」第十九詩:最後のページの先に





過去は遠ざかるのみだが 

未来は絶え間なく歩み来る 




そして僕には 

どちらを向いて 

生きていくのか 

選ぶ自由があるのだ……







 
やまない雨が降る








最後の誕生日なんて 

おかしな話だと思った 

僕は何のことなのだか 

さっぱりわからなかった 




僕がそれを理解したのは

誕生日会のあの日の事だ

今でも鮮明に思い出せる




そして僕はそこで

彼女には歩み来る

絶え間ない未来など




無い事を知った




僕は受け取った日記の

最後のページが

怖くてどうしても

読む事が出来ずにいた




それを読んでしまえば

もう永遠に僕に語りかける

彼女の言葉は終わってしまう




僕は日記を持って

彼女との最後の場所

海へ向かう川のそばで

ずっと立ちつくしていた




僕は流れのその先に

向かってたった一人 

目を閉じて語りかける 




天国に行った君の中では 

僕はずっといつまでも 

少年のままなんだろうね 




幸せな夢を見ながら 

眠りについたのだと 

せめて僕は信じたい 




生きている僕は 

一体どうすれば 

いいのだろうか 




この記憶と一緒に 

生きていく覚悟は 

出来てるつもりだ 




僕が犯した罪 




そしてこれからも僕が 

ずっと受け続けていく 




僕への罰 




記憶がゆっくりと 

意識の湖底に沈む 

君のいない世界で 




望む事すら

許されなかった

幸せな夢を見ながら 





そう、君のいない世界で…… 








きっと君は

この流れの先

海へ向かって

行ったと思う




ついに辿り着けなかった

あの海へ




だから僕はここで

あの頃の君の記憶と

一緒にこの日記を

読もうと思ったんだ




読む事が出来なかった

最後のページを……
 
 
 






切り取られた時の中で

やまない雨が降る

ずっとやまない雨が




 
 
 
 
時が紡ぐ

螺旋階段の先の

扉へ向けて僕は

階段を上ってゆく




何も無い世界

誰もいない世界

罪と罰の螺旋の世界




僕はもう振り返らなかった




儚く燃え尽きて壊れ

消えていく記憶を背に

新たな扉へ向けて僕は

崩れる階段を上ってゆく




無知だけど

無垢だった




あの頃の自分に別れを告げて……
 
 




 
 

雨が降る

やまない雨が降る 

 







 
最後の日記で

彼女が語った事




最後の日記で

僕に伝えたかった事




僕は日記を

読み終えた後

白紙のまま残された

ページを全部破って





川に流した




この流れの先にいる君に

白紙のページを届けて

いつか僕が君の所へ

行く事があったら




あの日記の続きを読ませて欲しい




それまでお互いに

半分ずつ持っていよう




今はまだ無理かも

しれないけれど

僕が新しい扉の先に

いつか歩いて行けるように




この流れの先にいる

君が書く日記の中で

君に恥じるような僕を

書かれてしまわない為にも




残された僕は再び立ち上がる




流れていく白紙の

ページを見送りながら




僕は残りの半分の

彼女の日記帳を

大事に鞄にしまい込んだ




あの時と同じ 

空気のにおいがした 

あの時と同じ 

水のせせらぎが聞こえた 




まるであの頃の僕を 

切り取ってこの場所へ 

置き去りにしたかの様に 




雨が降る中 

僕は歩き始める 




あの時と 

同じ空気の 

この場所から 




あの時と同じ 

水のせせらぎの 

この場所から 




切り取られ 

時を止めた 

この場所から 




置き去りにされた 

この場所から 

再び雨の降る中 




僕は歩き始める 













写真提供:GATAG 著作者:George Hodan(著作権放棄)

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2014/03/06 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

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