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2024/04/28

「永劫に続く夜の中で」第五詩:魔女狩り





異変は彼女が小さな教会に

立ち寄る直前に起こった

あれが噂の魔女だと

指を指し口汚く罵る男




寂れた教会までの小道と

今まで歩いて来た道は

多くの屈強な兵で塞がれた

逃げ道はどこにも無かった




更なる漆黒の闇が

彼女を飲み込もうとしていた




巡礼の旅は

本人の意思とは関係なく

存外の最悪な状況をもって

突然の終幕を迎える事となった




彼女は潔白を訴えた

魔術や呪術を使えぬ事を

私に出来るのは

祈る事だけなのだと




だが彼女は

無様に命乞いし

取り乱す様な姿は

決して見せなかった




本当は彼女も気付いていた




疫病と飢餓が

各地で猛威を奮い

国内の治安は荒れ

罪は溢れた




荒んでいく民衆の目を

国外へと早急に

向けさせる必要があった

戦争をする必要があった




国内で殺し合い

奪い合う事と

他国の異教徒を殺し

奪う事を天秤にかけ




時の権力者は

後者を選んだに過ぎない




その為に彼女は

邪魔な存在だった

各地を廻り

非暴力を訴える




彼女達巡礼者の様な存在は




運命は残酷だった

彼女に罪があるのかなど

最初から問題では無いのだ




民衆法廷による魔女裁判




本当は彼女も気付いていた

いつかこの様な日が

来るかもしれないと




異変は彼女が小さな教会に

立ち寄る直前に起こった

あれが噂の魔女だと

指を指し口汚く罵る男




更なる漆黒の闇が

彼女を飲み込もうとしていた












写真提供:GATAG|フリー画像・写真素材集  著作者:markbwavy

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2014/01/14 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「永劫に続く夜の中で」第四詩:渇き切った欲望





崩壊した精神の冥府へ下る扉へ

邪な歓喜の叫びを伴って

唇の端を不実の笑みに歪め

兵士達は我先にと押し寄せた




戦いは終わっていた

それからが本当の地獄だった




どれほどの時を遡ろうとも

戦いの勝者には敗者への

略奪暴行が恩賞として与えられる

この時代までは不変の常識だった




聖戦の理想を掲げた者は

目の前の痴態の真実に絶望した

教えに従い敬虔である者は

闇夜よりも苦い痛みに破滅した




その扉を開いてはならなかった

知らなければ幸せだった




だがそうして心を痛める者は

この呪われた場所に僅かだった

肉汁滴る甘美な獲物が目の前で

渇き切った欲望に手招きをする




敗者は無抵抗で略奪された

敗者は無抵抗で暴行された

逃げようとした者は殺された

逃げなかった者は惨殺された




異教徒の街は崩れ去った

あらゆる富が剥ぎ取られた

舌を噛んだ女性の死体の隣で

力なく泣き崩れる子供達の姿




守る為の剣も盾もなく

抗う意思も術も喪失し

最後に残された希望さえも

禍に相殺され食い尽くされる




戦いは終わっていた

それからが本当の地獄だった

崩壊した精神の冥府へ下る扉へ

兵士達は我先にと押し寄せた




聖戦の理想を掲げた者は言った

教えに従い敬虔である者は言った

その扉を開いてはならなかった

知らなければ幸せだった




神は死んだのだ















写真提供:総合素材サイト|ソザイング 様

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2014/01/13 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「永劫に続く夜の中で」第三詩:妄執と憎悪の果てに





万物が時至りて

相応に朽ち果てるのと同じように

幾多の災いと不幸が

徐々に民衆の人心を蝕み腐らせていく




病める者は生きる為に

貧しき者は食うが為に




異教徒討伐の名を借りて

妄執を纏った剣が血に染まる

憎悪に盾は割れ血肉へ届き

甲冑は無残に地を転がった




富める者は嘲笑った

力ある者はほくそ笑んだ




統率者の偽りの祝福は

民衆ではなく富へ向けられる

かの地を手中に収め

東西交易で財を成すのだ




貴様が持っているものをよこせ

全部よこせ

もっと、もっとだ
 
 
 

貧しき者は食うが為に

富める者は嘲笑った

病める者は生きる為に

力ある者はほくそ笑んだ




大地が血を吸うのをやめない

渇きが欲することをやめない

狂おしいまでの怒号と悲鳴が交錯し

邪悪でおぞましい不協和音を奏でる




統率者の偽りの祝福は

民衆ではなく富へ向けられる

幾多の災いと不幸が

徐々に民衆の人心を蝕み腐らせていく




万物が時至りて

相応に朽ち果てるのと同じように













写真提供:GATAG|フリー画像・写真素材集  著作者:LaurenMetcalfe

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2014/01/13 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(2)

「永劫に続く夜の中で」第二詩:巡礼者





世界にまだ錬金術と精霊

魔法があると信じられていた最後の時代

ルルドを旅する一人の女性の姿があった




彼女は魔法が使えるわけではなく

錬金術に長けているわけでもなく

精霊達の声を聞けたわけでもない

どこにでもいる普通の女性だった




教会から教会へ

彼女は巡礼の旅を続けた

人々が集まり祈りを捧げる様子を

いつも静かに微笑みながら眺めていた




戦争の機運が高まっていた

深刻な疫病と飢餓が各地を襲った

人々は残り少ない食料と財産を

心無い剣と力で奪い合った




教会から教会へ

彼女は巡礼の旅を続けた

告白し懺悔し苦しむ多くの人々に

彼女は様々な事を静かに語っていた




分け合う事の尊さ

普段の生活の知恵

赦し合う事の尊さ

病気に有効な薬草




いつからか彼女の周りには

多くの人が集まるようになった

人々が談笑する様子を彼女は

いつも静かに微笑みながら眺めていた




彼女は特別に美しいわけではなく

神秘的な魅力があるわけでもない

思慮深く儚げな黒い瞳が印象的な

どこにでもいる普通の女性だった




彼女を快く思わぬ者もいた

疑いの眼差しで扇動者の烙印を押し

彼女に対して信用の見返りに

魔術による奇跡を見せろと迫った




彼女は驚きもせず真摯に応じた

私にその様な大それた事はできません




でも私が大地を裂き雷を落とすよりも

あなたが手にしているその野いちご

家族がそれを見て喜ぶ姿のほうが

ずっと素敵な魔法だとは思いませんか




戦争の機運が高まっていた

深刻な疫病と飢餓が各地を襲った

教会から教会へ

彼女は巡礼の旅を続けた




世界にまだ錬金術と精霊

魔法があると信じられていた最後の時代




ルルドを旅する一人の女性の姿があった














撮影者:サヤキ

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2014/01/12 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「永劫に続く夜の中で」第一詩:異端者






この世に神など存在しない

信仰、戒律、教義、倫理

全ての楔から私は解き放たれた

真の自由を手に入れたのだ




見よ、秩序依存と言う名の監獄の中で

鎖に縛られたあの滑稽で醜悪な生き物を

あれが人か、人と呼べるものなのか




貴様等の目の前に神はいない

それは土くれで造られた人形に過ぎない

無論死後の世界など存在しない

神の戯言である理想郷など存在しない




信仰、戒律、教義、倫理

鎖に縛られた滑稽で醜悪な生き物

土くれで造られた人形




全ての楔から私は解き放たれた

真の自由を手に入れたのだ




富が欲しいか、名声が欲しいか

権力が欲しいか、金が欲しいか

自由を望むか私の様に

ならばこの場で真摯に誓え




貴様自身の、神を殺すがいい













写真提供:GATAG|フリー画像・写真素材集  著作:@yakobusan Jakob Montrasio 孟亚柯
 
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2014/01/12 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

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「いつだって僕の」

「サン・ミシェルの少女」

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「最後の言葉」

「天使の両翼」

「君の歌が聞こえる」(後書き)

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「3年待ってね」5478人/1位

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「天国に降る雪」5351人/5位

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「オルフェウスの竪琴」

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「無理に笑う人」

「夢も見ずに」

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