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Destination Station of a Dream
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ねえおとうさん、おなかすいたよ
その一言で私は殺せた
無論最初から
平気だったわけでは無い
むしろ相手よりも
怯えていたかもしれない
最初の一人を殺すまでは
途中からはもう
実はよく覚えていない
何人殺しても
同じになってしまっていた
幻想に蝕まれて精神も支配されて
抑えきれない負の感情が
永劫の炎となって身を焼き尽くした
そして血まみれの手で
病的なまでに夢中になって
目の前の恩賞にあり付いた
全てが手遅れだと悟る前に
名も無き穢れた呪いに
既に信心を奪われていた
貴様が持っているものをよこせ
全部よこせ
もっと、もっとだ
信仰はさらなる冒涜へと変貌し
神の祝福の届かないこの地で
私は異教徒を貪り奪い続けた
食べるためだと自分を慰めながら
狂気と死の蔓延する宴は続いた
もはや正気ではいられなかった
まだこの手に血がこびり付いている
まだこの手に肉が裂ける感触が残る
そんな目で私を見ないでくれ
もう思い出したくないんだ
まだこの手に骨が砕ける感触が残る
まだ耳から断末魔の叫びが離れない
気が付けば目の前に
舌を噛んで死んでいる女性がいた
醜悪な狂気の記憶から
ほんのひと時でも逃避するために
快楽を求めようとした自分が
やったのだと暫くして気付いた
その女性のすぐそばに
力なく泣き崩れる子供の姿があった
私の子供と
同じくらいの年齢の子供だった
ねえおとうさん、おなかすいたよ
私はまるで狂ったかのように泣いた
力尽きた後は声も無くさらに泣いた
金品と女性を手にした仲間が
不思議そうな目で私を眺めていた
そして今私は
牢獄の扉の前に立っている
以前教会でこんな私にも
分け合うことの尊さを
教えてくれたあの彼女が
扉の向こうで力尽き眠っている
神に仇なす魔女を助け
堕落したとの誹りは免れまい
だがこれが贖罪だと
言うつもりは微塵も無い
ただ彼女が捕らえられたと伝え聞き
何かせずにはいられなかった
私は手にした
鍵束のうちのひとつを
鍵穴の中へと差し込んだ
写真提供:GATAG|フリー画像・写真素材集 著作者:fusion-of-horizons
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2014/01/14 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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