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Destination Station of a Dream
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私は少数の人々が
身を寄せ合うような寂れた村で
薬草をつみ売るだけの
ありふれた貧しい家に生まれた
決して暮らしは
豊かとは言えないけど
昨日から続く
当たり前の日常
平凡な幸せ
それが明日も
そしてその後も
ずっと続くものと
根拠も無く信じていた
きっかけは流行り病
友人の様子がおかしいと
村の誰もが気付いていた
伝染病を疑っていた
私の知る薬草では
直せなかった
精神に異常をきたし
四肢が壊死する
そんな恐ろしい病気は
私の大切な友人を
瞬く間に壊し尽くし
黄泉の国へ連れ去った
私の知る薬草では
直せなかった
何かせずにはいられなかった
家族は旅に反対しなかった
単に口減らしを動機に
巡礼に出る人たちは
貧しい地では珍しくない
旅先では様々な出会いがあった
農家の人々、工房の職人
まじない師、船乗りや商人
身分の高いお方が物珍しさで
教会をのぞいて行った事も
私はこの巡礼の旅で
多くの貴重なお話を
たくさんの人達から
聞かせて頂けた
そして私は
次第に気付き始めていた
権力者は国内の安定を望み
異教徒の街から奪うと決めた
力ある者は戦争と混乱に乗じ
武勲と名誉と富を欲した
富ある者は異教徒の地と
交易の権利と財利を望んだ
力なき貧しき者は食べる為に
彼等に利用される事を自ら欲した
私は無力だった
知らなければ幸せだった
昨日から続く
当たり前の日常
平凡な幸せ
それが明日も
そしてその後も
ずっと続くものと
根拠も無く信じていた
世界が私を拒絶した
時代が私を拒絶した
誰も救ってくれなかった
神も救ってくれなかった
教えに従って
非暴力を訴えていた私は殺される
私は魔法など使えない
どこにでもいる普通の人間
だけどどこかでこんな日がいつか
来るかもしれないと思ってた
苦痛の果て亡くなった友人
告白し懺悔し苦しむ多くの人々
旅先での様々な出会い
何かせずにはいられなかった
だけど魔女でも聖人でもない
普通の人間である私は今
窓も無く光の差さない
冷え切った暗い牢獄
永劫に続く夜の中で
襲い来る死の恐怖にただ震えるだけ
こわい
こわい、こわい
こわいよ……
写真提供:GATAG|フリー画像・写真素材集 著作者:Dorothea Lange
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2014/01/14 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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