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Destination Station of a Dream
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月の女神アルテミスの双子の
兄弟である太陽神アポロンは
女性に対しふしだらであった
オリオンを決して認めなかった
そして純潔を司る
処女神である彼女に
恋愛は許されなかった
失って初めて
私は知った
この疼きは消えず
心に浸み込んでゆく
儚く散ったものが
やがて土に還るように
虚ろな静寂が痛い
耳に届くものは
全て空白の中に
溶けていくのに
思い出せた事を
伝えることも出来ず
全ては土に
空白の中に
消えてしまった
私は孤独だった
手に入れたものは
望んでいたものとは
違っていたという事に
この手が血で汚れる前に
あなたが消える前に
気付くべきだった
この疼きは消えない
虚ろな静寂が痛い
失って初めて
私は知った
愛さなければ良かったと……
私の憤懣はもはや
隠し様も無かった
私は我が家に戻り
そして妻に愚痴た
テミスティオスは
「人間愛の哲学に
よって成る支配者は
当時のペルシア
専制君主とは
全く異なり
専制君主は
正義を持たず
そしてその臣下は
いずれも野蛮である」
そう語ったのだ
そして「スキュタイ人も
ペルシア人と同様に野蛮
狂暴、非理性的であり
彼等は平和に値しない」
とまで言ったのだ
議論の余地など
無く全く同感だと
言わざるを得ない
そう言って憤る私を
妻が不安そうな顔で
見つめているのには
既に気付いていた
だがその時の私は
それに配慮する
余裕も無かった
きっと鋭敏な妻も
気付いているのだろう
この私がこれから
やろうとしている事を
暗殺しかなかった
この国は疲弊していた
かつての栄光のローマは
老いて朽ちてゆくのみだ
このままではいられない
病的な疲弊の理由は
蛮人だと確信していた
かつてローマの奴隷で
今や軍を率いる蛮人の
あの男を殺すのだ
他に知られてはならぬ
この事は腹心の部下と
信頼できる協力者のみ
その意思を伝えてある
妻は私に抗弁した
理想と狂信を
取り違えては
ならないと
その声は朝もやの
淡い光のように
柔らかいが
私を止めたいという
強靭な意志をその
言葉の内に感じた
そしてさらに私に
彼女は静かに語り始めた……
素材提供:GATAG 画家:クロード・ロラン(パブリックドメイン)
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2014/03/16 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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