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Destination Station of a Dream
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アルテミスはオリオンの
復活を願ったが
冥府の王ハデスが
それに異を唱えた
アルテミスは父であり
神々の長ゼウスに訴えた
だがゼウスも死者の復活を
認めることは出来なかった
その瞬間に一体何が
起こったのかを私は
理解出来なかった
私の放った矢は一直線に
目標へと寸分違わず
吸い込まれていった
だが矢を受けた
人間が倒れ
長い髪が
フードの奥からこぼれた
私が射抜いてしまったのは
あの蛮人の男ではなく
間違いなく女性だった
遠くて良く
見えないが
直感で私は
嫌な予感を感じた
私は門まで走った
この嫌な予感が
どうか間違いで
あって欲しいと
祈りながら……
倒れていたのは妻だった
私を止める為に
ここへ来たのだ
信じ難い現実の前で
私は成す術も無く崩れた
何という愚かな男だ私は
言葉では言い尽くせぬ
凄まじい絶望が私を襲う
失って初めて
私は知った
私が本当に
欲しかったのは
理想や信念の成就ではなく
自尊心を満たす事でも無かった
妻と子供が一緒に
幸せに暮らせる世界
それだけで良かった
何という愚かな男だ私は
この疼きは消えず
心に浸み込んでゆく
儚く散ったものが
やがて土に還るように
虚ろな静寂が痛い
耳に届くものは
全て空白の中に
溶けていくのに
思い出せた事を
伝えることも出来ず
全ては土に
空白の中に
消えてしまった
私は孤独だった
手に入れたものは
望んでいたものとは
違っていたという事に
この手が血で汚れる前に
あなたが消える前に
気付くべきだった
この疼きは消えない
虚ろな静寂が痛い
失って初めて
私は知った
愛さなければ良かったと
妻は家の反対を
押し切って私と
一緒になった
「これが私の選んだ幸せよ」
彼女はいつだって
そう言っては微笑んだ
私が間違っていた
彼女の家の者が
言っていた事が
正しかったのだ
私は彼女を
不幸にしてしまった
愛してはいけなかった
私は震える手で
妻に手を伸ばした
妻は目を開いた
そして私を見た
その顔は優しく
微笑んでいた
そして妻は私に
こう言ったのだ
「私のこの姿を忘れないで
そして二度とこんな事
しないと誓って
あなたにはまだ娘がいるのだから
どうかあの子を
幸せにしてあげて
私の最後のお願いよ……」
それが最後の妻の言葉だった
この事件から私は
一生償う術の無い
罪を背負う事になった
嘆き、哀しみ
呪われた色彩の
闇の世界をただ
彷徨い続けていた
だが私には
娘が残されていた
妻の最後の言葉が
私のこれからの生を
僅かに照らす小さな光となった
立ち止まることは許されない
私は愛する娘の為にも
歩み続けなければならない
残された愛の為に
生きていこう
失われた世界の中で
あなたのいない世界の中で
贖罪と運命の重荷を背負って
それでも私は
生きていこう
たったひとつ
私に許される
残された愛の為に……
素材提供:GATAG 画家:ウィリアム・アドルフ・ブグロー(パブリックドメイン)
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2014/03/21 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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