[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
Destination Station of a Dream
「俺ね、フラれたんだ
昨日相談した総務の娘に」
私はこのバーが好き
狭いけど落ち着いた
雰囲気とジャズの調べ
普段ジャズなんて
聞かない私だけど
センスのあるレトロな
調度品が飾られていて
明る過ぎないライトに
柔らかく浮かび上がる
窓の外には夜の街並
葉を落とし寒々とした
木々にライトアップの
眩しい光の花が咲き誇る
窓の外の街の夜景が
遠く地平線の彼方で
天の星々と溶け合う
素敵な夜になりそうだ
目の前の暗雲のように
落ち込んだ同僚の彼が
いなければの話だけど
彼は会社の研修で
知り合って以来の
4年越しの腐れ縁
決してモテないわけじゃ
ないのだけれどなぜだか
損ばかりする性格なのは
私だけが知ってる秘密
そして彼はお酒の
力を借りた時だけは
ほんの少し饒舌になる
「俺ね、フラれたんだ
昨日相談した総務の娘に」
そんな彼の告白を
美味しくもない
ツマミにしながら
私はさらにお酒を飲む
「で、その代替品として
私を誘ったわけなんだ
失礼な男だわ貴方って」
私は、とりあえずそんな
冷たい言葉を彼に返した
彼もそこは理解している
少し気まずそうに笑った
「だってそういう時の
女性の気持ちなんて
俺って鈍感だからさ
わからないんだよね
相談出来そうな人って
君しかいないからさ俺」
本当に彼は不器用な人だ
いつだってこんな感じで
損な役ばかりをしている
彼は少し落ち込んでいたようだ
それでも気を取り直し
無理に笑顔を作って
彼は私に話しかける
「だから今日は付き合って
飲みたい気分なんだよね」
その寂しげな笑みの
理由を私は知ってる
昨日、彼は私に聞いた
こういう時の女性って
どんな気持ちなのって
実にヘタな三文芝居で
本当に彼は不器用な人だ
いつだってこんな感じで
損な役ばかりをしている
たぶん彼は噂になって
彼女を傷付けない様に
自分がフラれたことに
したいのだろうと思う
彼は全く知らないけど
実は私は総務の娘にも
彼の相談を受けていた
昨日告白をしたらしい
フラれたのは彼女だった
好きな人がいるから、と
彼女の告白を断ったのは
本当は目の前の彼の方だ
好きな人がいるから、と……
そしてすぐ翌日に
私は彼に誘われた
いいわよ奢りなら
私はそう答えてた
私はこのバーが好き
狭いけど落ち着いた
雰囲気とジャズの調べ
普段ジャズなんて
聞かない私だけど
素敵な夜になりそうだ
写真提供:総合素材サイト「ソザイング」様
にほんブログ村 ←良い記事と思って頂けた方、宜しければクリックお願いします
COMMENT
COMMENT FORM