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Destination Station of a Dream
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1970~1980年代にかけて
パブロ・エスコバル率いる
コロンビアの複合犯罪組織
メデジン・カルテルが台頭し
全世界のコカイン市場を
この複合犯罪組織が席巻した
アメリカはこれを壊滅させる為
国家安全保障局や
中央情報局を使い
アメリカ軍を派兵した
拠点の空爆やミサイル攻撃
そして各地での
激しい銃撃戦が繰り広げられた
彼女はきょとんとした後
口を片手でふさぎながら
再び笑い始めてしまった
「じゃあ私なんかじゃ
勝てないわね
奥様だと言うと思ったわ」
少し寂しげな
表情を見せながら
彼は彼女に言った
「妻も死んだよ
子供の死に絶望して
麻薬に逃げちまった」
その言葉に
彼女の笑顔も固まった
「そうだったのですね
だからあなたは
たった一人で
あんなところに
お金が目的ではなく
麻薬を憎んでらっしゃるのですね」
彼は無理に
笑顔を作りながら
突然彼女に振り向いて
こう言った
「20ドルだ
こんな危険な事に
巻き込んでるんだ
報酬くらいは頂かないとな」
彼女は呆然として
彼に聞き返した
「20ドルって
たったそれだけで
いいのですか?」
男はニヤリと笑ったが
不思議と憎めない
愛嬌のある表情だった
「ああいいぜ
一杯おごってくれ
20ドルで俺とあんた
二杯分だな」
彼女は再び
吹き出してしまった
「一緒に飲もうって事ね
不思議だわ
私こういう状況なのに
なぜか少しも怖くない」
男はすねたような声で
彼女の言葉に応じる
「勘違いするなよ
無料奉仕ってのは
俺が二番目に嫌いな
言葉だからなのさ」
彼女は笑顔で聞いた
「二番目って
じゃあ一番は何なんですか?」
彼は泣きそうな
表情を作って
彼女に見せながら
こう答えた
「ほうれんそう、さ
よく残して娘に叱られた」
しかし
再び銃声が
彼ら二人の会話を
強制的に中断させた
だが今回の銃弾は
少し先の石ではなく
正確に彼女の胸を貫いていた
クラック・コカインは
量のかさ増し目的や
らしく見せかける目的で
有毒な不純物が
混ぜられる事がある
マカダミアナッツや
ろうそくの蝋などである
アメリカ司法当局は
おとり捜査に偽物として
マカダミアナッツを
粉末にしたものを使っていた
これらが発する有毒ガスも
麻薬本来の体調異変、禁断症状
心神喪失や幻覚などに加え
様々な原因で体と精神を蝕んでいく
男は自分の
判断力の無さを呪った
金を取り戻す人間が
雇ったのはチンピラではなく
プロだったのだ
彼は追手に向かって
二度引き金を引いた
そして間髪入れず
追手の懐に飛び込んだ
一動作で懐から
抜かれたナイフは
追手のわき腹へ吸い込まれ
あばらに邪魔されず心臓に達した
追手は驚愕に
顔面を引きつらせながら
彼に言った
「その軍隊の身のこなし
お前も
プロだったのか……」
そんな追手の呪詛の声に
耳も貸さず彼は
急いで倒れている
彼女のそばに駆け寄った
「おいしっかりしろ
大丈夫か?」
彼女は
弱々しく微笑んだ
「お願いがあるの
あなたならきっと
叶えてくれる……」
彼は慌てて叫んだ
「わかってる
こいつであんたの子供の
薬を買えばいいんだな
わかったからもうしゃべるな」
自分の服を破って
止血を試みる彼を
笑顔のまま眺めながら
彼女は言葉を続ける
「確信してるわ私
子供は間違いなく助かる
あなたに会えて良かった
ありがとう
あなた私が会った中で
二番目にいい男よ」
止血は無駄だと
悟ってしまった彼は
それでも無理に笑顔を作り
彼女に聞いた
「ほう
俺よりいい男か
じゃあ一番は
誰だったんだい?」
彼女は無邪気に微笑んだ
その姿が最後だった
「決まってるわ
私の息子よ」
1980年代には
コカインの供給量が増大
その路上価格が下がると
貧困層や若者にも広がり
深刻な社会問題となった
彼は死なせてしまった彼女の
墓標の前に立っていた
「あんたが持って逃げた金は
メデジン・カルテルがらみの
金だったみたいだぜ
女は疑われにくいから
本人に何も知らされず
良く運び屋に利用される
どうりで凄い額だと思った
ほらよ
あんたの子供の医療費と
薬代を差っ引いた残金の
20ドルで買ったウィスキーだ」
彼は封をあけ
ウィスキーを彼女の
墓標へと注いだ
そして男は最後に
彼女の墓標に
こんな言葉を残して
去っていった
「あんたの持ってた金
ちゃんと約束は守ったが……
勘違いするなよ
そんな辛気臭え金で
飯なんぞ食っちまったら
寝覚めが悪いからな
それだけだ」
写真提供:写真素材「足成」様
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2014/01/24 自由詩:短編を様々な作風で Comment(0)
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