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Destination Station of a Dream
私は記憶を失った
当然の報いだった
今は後悔している
私は墓泥棒だ
獲物を手にし
帰路の途中で
事故にあった
それより前の事が
全く思い出せない
気が付けば私は
病院で寝ていたのだ
事故時の私の所持品から
私が誰なのかは理解した
そう、理解出来ただけで
思い出したわけではない
そうその事故時の
所持品が私の事を
私だと説明して
いるに過ぎない
しかし私はその時から
呪いの深き闇に囚われた
記憶を失うのは
私だけではなく
信じ難いことに
周りの人間まで
記憶を失うのだ
私は私を必死に調べた
残る唯一の手がかりは
事故前墓荒らしをして
帰路に着く最後の記憶
私はその最後の記憶
それ以外を全て失った
あの事故が原因だった
それだけは覚えている
だがなぜ私の知己の
人間までもが記憶を
次々と失っていくのか
これが墓を暴く者への
呪いだとでもいうのか
全く馬鹿馬鹿しい話だ
私は退院したが
こんな状態のまま
全うな仕事など
出来るわけも無く
今再びこうして
墓を掘っている
このあたりには
裕福な家庭や
貴族の家が多く
生前大事にしていた
装飾品などを一緒に
棺の中に入れたまま
埋葬する風習がある
今、掘っている墓は
刻んだ墓石の文字が
擦り切れて読めぬ程
随分古いものだった
だが掘っている場所の
土が余りにも軟らかい
つまり、つい最近に一度
荒らされた事がある墓だ
元に埋め戻されて
まだそれ程時間が
経っていないのだ
恐らくこの墓には
もう既にお宝など
残ってないだろう
私はそれでも
なお一心不乱に
ただ掘り続けた
正気を失っていた
私に一体何が起こったのか
なぜ私を訪ね来る人は突然
知らない、何もわからない
覚えてないと言い出すのか
その答えは
目の前にあった
墓から掘り出された
死体を収める棺には
私の名前が彫られていた
写真提供:GATAG 著者:Bash Linx
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どうやら私は
助かったらしい
それにしても
信じ難い体験だった
その館の中には既に
命あるものは無かった
私は少しばかり
それに気付くのが
遅かったようだ
私の腕はまだ
血を流している
致命傷ではないが
刺すように痛む
何が起こったのか説明が出来ない
ただ、見たものを
そのまま言えば
あの館の中に
生きている者は存在せず
訪れた私を
出迎えたのは
全て死者であった
ということだけだ
そしてその死者たちは
何も知らず奥へ進んだ私に
次々と襲い掛かってきた
あまりの恐怖に
そこからは
私の記憶は
混濁している
ただ生き延びるだけに必死で
どこをどう逃げたかさえ
全く思い出せないのだ
とにかく一刻も
早く館の外へ
それだけが
あの呪われた場所での
私の唯一の望みだったのだから
次々と襲い掛かる
その不気味で醜悪な存在
私は出口に近い
ドアへ走ったが
もはやそこも
その存在が塞いでいた
私は木枠の窓を破り
庭へ出ようとした
しかしその木枠の窓の向こうにも
その禍々しい姿の存在が
その赤黒い爪を
私の喉元に突き立てようと
待ち構えていた
他に出口は無いか
必死で探した
私は怪我を負ったが
ようやく裏口から庭に
そして館の外へ脱出に成功した
私は痛む腕の出血を
もう一度確認し
そして気付いてしまった
私が破って
逃げようとした
木枠の窓は
窓ではなく鏡だったのだ
写真提供:GATAG 著作者:George Hodan
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それは時が
産声をあげるよりも
遥か以前の
原初から存在していた
多くのものが
その存在の前で
一瞬の輝きを見せて
瞬く間に消えていった
絶対の闇が
混沌よりも深く
虚無を包み
なお拡がっていた
狂気も呪いも
ここには届かず
愛も希望も
無意味だった
絶望という
概念すら無く
死と再生にも
価値は無い
終末ですら
意識に残らぬ
満ち溢れた
瑣末事だった
その場所には
ただ川が流れ
万物は
上流から下流へと
流れるかのごとく
徐々に形を失う
ただそれだけが全てだった
戯れに厭きた
その存在は
手に在るものを
手放し
次のものへと
手を伸ばした
手放したものは
地に落ちて潰れた
人が潰れた
動物も植物も潰れた
大地も海も潰れた
地球が潰れた
神々さえも潰れた
惑星も潰れた
恒星も潰れた
銀河も潰れた
宇宙全てが潰れた
全ては意識にすら
残らぬ程一瞬だった
宇宙が無重力だったのは
落ち続けていたからだと
理解出来た者などもはや
そこには誰もいなかったのだ……
写真提供:GATAG 著作者:NASA,ESA,and G.Bacon(STScI)
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あなたは自分の命より
大切なものはありますか
無い人には
これを差し上げます
平和の本
あなた自身を守る方法が
ここには書かれているのです
あなたは自分の命より
大切なものはありますか
ある人には
これを差し上げます
戦争の本
大切なひとを守る方法が
ここには書かれているのです
あなたは冷たい人ですか
それとも優しい人ですか
冷たい人には
これを差し上げます
平和の本
目を閉じて傷付かず
生きていけるようになります
あなたは冷たい人ですか
それとも優しい人ですか
優しい人には
これを差し上げます
戦争の本
知る苦しみに気付いて
生きていかなくてはなりません
あなたには
愛している人がいますか
いない人には
これを差し上げます
平和の本
あなた自身を守る方法が
ここには書かれているのです
あなたには
愛している人がいますか
いる人には
これを差し上げます
戦争の本
大切なひとを守る方法が
ここには書かれているのです
あなたの目の前に
好きな人がいます
愛してる人がいます
好きな人には
平和の本を差し上げます
愛してる人には
戦争の本を差し上げます
最後にひとつ
お聞きします
あなたは本当に愛されていますか
写真提供:Free.Stocker 様
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1970~1980年代にかけて
パブロ・エスコバル率いる
コロンビアの複合犯罪組織
メデジン・カルテルが台頭し
全世界のコカイン市場を
この複合犯罪組織が席巻した
アメリカはこれを壊滅させる為
国家安全保障局や
中央情報局を使い
アメリカ軍を派兵した
拠点の空爆やミサイル攻撃
そして各地での
激しい銃撃戦が繰り広げられた
彼女はきょとんとした後
口を片手でふさぎながら
再び笑い始めてしまった
「じゃあ私なんかじゃ
勝てないわね
奥様だと言うと思ったわ」
少し寂しげな
表情を見せながら
彼は彼女に言った
「妻も死んだよ
子供の死に絶望して
麻薬に逃げちまった」
その言葉に
彼女の笑顔も固まった
「そうだったのですね
だからあなたは
たった一人で
あんなところに
お金が目的ではなく
麻薬を憎んでらっしゃるのですね」
彼は無理に
笑顔を作りながら
突然彼女に振り向いて
こう言った
「20ドルだ
こんな危険な事に
巻き込んでるんだ
報酬くらいは頂かないとな」
彼女は呆然として
彼に聞き返した
「20ドルって
たったそれだけで
いいのですか?」
男はニヤリと笑ったが
不思議と憎めない
愛嬌のある表情だった
「ああいいぜ
一杯おごってくれ
20ドルで俺とあんた
二杯分だな」
彼女は再び
吹き出してしまった
「一緒に飲もうって事ね
不思議だわ
私こういう状況なのに
なぜか少しも怖くない」
男はすねたような声で
彼女の言葉に応じる
「勘違いするなよ
無料奉仕ってのは
俺が二番目に嫌いな
言葉だからなのさ」
彼女は笑顔で聞いた
「二番目って
じゃあ一番は何なんですか?」
彼は泣きそうな
表情を作って
彼女に見せながら
こう答えた
「ほうれんそう、さ
よく残して娘に叱られた」
しかし
再び銃声が
彼ら二人の会話を
強制的に中断させた
だが今回の銃弾は
少し先の石ではなく
正確に彼女の胸を貫いていた
クラック・コカインは
量のかさ増し目的や
らしく見せかける目的で
有毒な不純物が
混ぜられる事がある
マカダミアナッツや
ろうそくの蝋などである
アメリカ司法当局は
おとり捜査に偽物として
マカダミアナッツを
粉末にしたものを使っていた
これらが発する有毒ガスも
麻薬本来の体調異変、禁断症状
心神喪失や幻覚などに加え
様々な原因で体と精神を蝕んでいく
男は自分の
判断力の無さを呪った
金を取り戻す人間が
雇ったのはチンピラではなく
プロだったのだ
彼は追手に向かって
二度引き金を引いた
そして間髪入れず
追手の懐に飛び込んだ
一動作で懐から
抜かれたナイフは
追手のわき腹へ吸い込まれ
あばらに邪魔されず心臓に達した
追手は驚愕に
顔面を引きつらせながら
彼に言った
「その軍隊の身のこなし
お前も
プロだったのか……」
そんな追手の呪詛の声に
耳も貸さず彼は
急いで倒れている
彼女のそばに駆け寄った
「おいしっかりしろ
大丈夫か?」
彼女は
弱々しく微笑んだ
「お願いがあるの
あなたならきっと
叶えてくれる……」
彼は慌てて叫んだ
「わかってる
こいつであんたの子供の
薬を買えばいいんだな
わかったからもうしゃべるな」
自分の服を破って
止血を試みる彼を
笑顔のまま眺めながら
彼女は言葉を続ける
「確信してるわ私
子供は間違いなく助かる
あなたに会えて良かった
ありがとう
あなた私が会った中で
二番目にいい男よ」
止血は無駄だと
悟ってしまった彼は
それでも無理に笑顔を作り
彼女に聞いた
「ほう
俺よりいい男か
じゃあ一番は
誰だったんだい?」
彼女は無邪気に微笑んだ
その姿が最後だった
「決まってるわ
私の息子よ」
1980年代には
コカインの供給量が増大
その路上価格が下がると
貧困層や若者にも広がり
深刻な社会問題となった
彼は死なせてしまった彼女の
墓標の前に立っていた
「あんたが持って逃げた金は
メデジン・カルテルがらみの
金だったみたいだぜ
女は疑われにくいから
本人に何も知らされず
良く運び屋に利用される
どうりで凄い額だと思った
ほらよ
あんたの子供の医療費と
薬代を差っ引いた残金の
20ドルで買ったウィスキーだ」
彼は封をあけ
ウィスキーを彼女の
墓標へと注いだ
そして男は最後に
彼女の墓標に
こんな言葉を残して
去っていった
「あんたの持ってた金
ちゃんと約束は守ったが……
勘違いするなよ
そんな辛気臭え金で
飯なんぞ食っちまったら
寝覚めが悪いからな
それだけだ」
写真提供:写真素材「足成」様
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