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2024/04/19

「想いは流れる」終詩:3月7日、眩しい世界の中で





3月7日、眩しい世界の中で 




生きているのが不思議だった 

もう疲れたと言う感覚すら 

全くわからなくなってしまった 




今は酷く眠くて 

意識がしっかり 

しないのだけど 




今日の事だけは絶対に 

書き終えなければならない 

でもまずは今日の事を書く前に 










お父さんお母さん、お願いです 

この日記は彼に渡してください 

私がどれほど幸せだったのかを 

どうしても彼に伝えたいんです 




きっともう私は家には帰れない 

本当に親不孝な娘でごめんなさい 




もし帰れなくても私は 

いつまでもずっと 

お父さんとお母さんの 

幸せを祈っています…… 










そして私の最後に 

なるかもしれない日記 




作戦は大成功だった 

ちょっとだけ罪悪感を 

感じてしまったけど 




やっぱり彼は 

底抜けにお人好しだ 

私は海に向けて電車に 

乗り込む事に成功した 




何度も彼は 

帰ろうと言った 

だけどごめんね 

帰るつもりは全く無いよ 




今日は思いっきり 

君に甘えてやろうと 

意気込んでいたのだけど 




いざとなるとこれが 

なかなか難しいのだ 

最初は本当に苦労した 




よしここだって場面で 

どうしても恥ずかしく 

なってしまう私…… 




仕方が無いので電車で

眠ってるふりをして

肩に寄りかかってみたり




草原で転んで

手を握ってもらったり

川の水にさわるからと

体を支えてもらったり




今考えてみると

我ながら健気で

泣けてきそうだ




でもいつもより

たくさん話が出来た

いつもよりたくさん

君の笑顔が見られた




足元が危ないからって

途中からはずっと手を

つないでもらっていた




世界がこんなに眩しいなんて

私は知らなかった

川の水がこんなに冷たいなんて

私は知らなかった




全身の感覚が無くなっていく

これはかなりまずい時の症状だ

だけどちっとも怖くなかった

君がすぐ隣で微笑んでくれるから




いつものかわいくない私は

もうどこにもいなかった




風がくすぐったいねと言ったら

彼は少し驚いて優しく笑った

私は彼の腕につかまって




つい幸せだって言ってしまった




森の中で迷った上に

体はボロボロだった

なのに不安なんて無かった

この気持ちはもう隠せない




生まれてきて良かった




こんな素敵な一日が

人生の最後に私を

待っていたなんて




もう彼は戻ろうなんて

二度と言わなかった

そして携帯が圏外だったので

二人で眠れるところを探した




公園の休憩所で

焚き火をしながら

私達は二人並んで

ずっと話し続けた




寒いからと言って

もう一度だけ

彼の肩に寄りかかった




彼はそっと肩を抱いてくれた




本当にありがとう

でもごめんね

私頑張ったけど




明日までは耐えられそうもない




体は悲鳴をあげていた

でも私は笑顔の奥へ

必死にそれを隠していた




不思議と怖くなかった

私は全てを受け入れる

心残りは無かったから










君に聞いて欲しい事があります

私からの最後のわがままです




どうか君は幸せになって下さい

出来れば私の事は忘れて下さい




私の人生はきっと

ここで終わります

だけどあなたには

私と違って未来がある




私という過去は時間とともに

どんどん君から離れていく

だけど君の未来は

絶え間なくやってくる




そして君にはどちらを向いて

生きていけばいいのかを

出来るだけ早く気付いて欲しい




君には罪も罰も無い

ただただ優しかっただけ

でもきっと君は罪悪感を

感じてしまうと思うんだ




でも君は何も悪くない




罪と罰の螺旋から抜け出し

遠く去っていく過去を忘れ

少しでも早く新しい扉を開き

その先へ歩いて行って欲しい




私の事は心配要りません

この冬に君が抱いた気持ち

少年の今の君はずっと

永遠に私のものだから




それだけはどんなに

時が経ってもかわらない

私はこの幸せな気持ちを

胸に抱いて眠る事ができる




前にも言った事があるけど

父親に海に行くとせがんで

私一度死にかけた事があって

その時に思ってしまったの




私は何の為に生きてるのかって




でも今ならわかる

今の私なら

確信をもって言える

そう、私は……






私はあなたに逢う為に生まれてきました






たくさんの笑顔をありがとう

たくさんの幸せをありがとう




だからどうか泣かないで

本当に私は今幸せなのだから

あなたに逢えて良かった

心からそう思っているのだから




ずっとずっと

言いたくて

言えなかったけど




今ここに書きます

勇気を出して




君は私の全てです

私は君に逢う為に

生まれてきました






あなたの事が大好きです
   






   
   
   
   
   
   

写真提供:GATAG 著作者:PublicDomainPictures(著作権放棄)        不治の病で亡くなった従兄弟へ


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2014/03/07 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(2)

「想いは流れる」第十九詩:最後のページの先に





過去は遠ざかるのみだが 

未来は絶え間なく歩み来る 




そして僕には 

どちらを向いて 

生きていくのか 

選ぶ自由があるのだ……







 
やまない雨が降る








最後の誕生日なんて 

おかしな話だと思った 

僕は何のことなのだか 

さっぱりわからなかった 




僕がそれを理解したのは

誕生日会のあの日の事だ

今でも鮮明に思い出せる




そして僕はそこで

彼女には歩み来る

絶え間ない未来など




無い事を知った




僕は受け取った日記の

最後のページが

怖くてどうしても

読む事が出来ずにいた




それを読んでしまえば

もう永遠に僕に語りかける

彼女の言葉は終わってしまう




僕は日記を持って

彼女との最後の場所

海へ向かう川のそばで

ずっと立ちつくしていた




僕は流れのその先に

向かってたった一人 

目を閉じて語りかける 




天国に行った君の中では 

僕はずっといつまでも 

少年のままなんだろうね 




幸せな夢を見ながら 

眠りについたのだと 

せめて僕は信じたい 




生きている僕は 

一体どうすれば 

いいのだろうか 




この記憶と一緒に 

生きていく覚悟は 

出来てるつもりだ 




僕が犯した罪 




そしてこれからも僕が 

ずっと受け続けていく 




僕への罰 




記憶がゆっくりと 

意識の湖底に沈む 

君のいない世界で 




望む事すら

許されなかった

幸せな夢を見ながら 





そう、君のいない世界で…… 








きっと君は

この流れの先

海へ向かって

行ったと思う




ついに辿り着けなかった

あの海へ




だから僕はここで

あの頃の君の記憶と

一緒にこの日記を

読もうと思ったんだ




読む事が出来なかった

最後のページを……
 
 
 






切り取られた時の中で

やまない雨が降る

ずっとやまない雨が




 
 
 
 
時が紡ぐ

螺旋階段の先の

扉へ向けて僕は

階段を上ってゆく




何も無い世界

誰もいない世界

罪と罰の螺旋の世界




僕はもう振り返らなかった




儚く燃え尽きて壊れ

消えていく記憶を背に

新たな扉へ向けて僕は

崩れる階段を上ってゆく




無知だけど

無垢だった




あの頃の自分に別れを告げて……
 
 




 
 

雨が降る

やまない雨が降る 

 







 
最後の日記で

彼女が語った事




最後の日記で

僕に伝えたかった事




僕は日記を

読み終えた後

白紙のまま残された

ページを全部破って





川に流した




この流れの先にいる君に

白紙のページを届けて

いつか僕が君の所へ

行く事があったら




あの日記の続きを読ませて欲しい




それまでお互いに

半分ずつ持っていよう




今はまだ無理かも

しれないけれど

僕が新しい扉の先に

いつか歩いて行けるように




この流れの先にいる

君が書く日記の中で

君に恥じるような僕を

書かれてしまわない為にも




残された僕は再び立ち上がる




流れていく白紙の

ページを見送りながら




僕は残りの半分の

彼女の日記帳を

大事に鞄にしまい込んだ




あの時と同じ 

空気のにおいがした 

あの時と同じ 

水のせせらぎが聞こえた 




まるであの頃の僕を 

切り取ってこの場所へ 

置き去りにしたかの様に 




雨が降る中 

僕は歩き始める 




あの時と 

同じ空気の 

この場所から 




あの時と同じ 

水のせせらぎの 

この場所から 




切り取られ 

時を止めた 

この場所から 




置き去りにされた 

この場所から 

再び雨の降る中 




僕は歩き始める 













写真提供:GATAG 著作者:George Hodan(著作権放棄)

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2014/03/06 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第十八詩:3月5日、晴れ





3月5日、晴れ 




どうやら私の 

負けみたいだ 

今日も彼は 

来てくれた 




このままでは彼と 

全く話せないまま 

何の解決もせずに 

私の死を彼は見る 




たぶんこれ以上 

私が意地を張っても 

結果は同じなのだろう 




本音は会いたいという 

気持ちに負けたのかも 

しれなかったのだけど 




観念して私はドアを開け 

廊下にいる彼に会った 




彼は私を見ると 

笑顔で歩み寄る 

嬉しくて少しだけ 

くやしかったかも 




また私は憎まれ口 

本当は喜んでるくせに 

「あなたって馬鹿なのか 

よっぽど暇なのね」 




彼はにっこり笑って 

いつものように答える 

「どうもそうみたいだ」 




それからの私は 

もう止まらなかった 




彼の優しい笑顔が 

私の目の前にある 

それだけで私の心は 

瞬く間に満たされた 




神様がくれた最後の時間 

あなたがくれた最後の時間 




この空白の数日間を 

取り戻すかのように 

私はたくさん笑った 




彼は魔法使いみたいだ 

昨日まであんなに 

病んで荒んでいた私を 

瞬く間に笑顔にした 




きっとこれは 

彼もそして私も 

二人が望んだ 

結末だったんだ 




私は病院服が気に入らない

という事にして彼に家から

私服を持ってきて欲しいと




お願いをした




このお願いはきっと

死神の渡す契約書に

サインする事になる




そう私は覚悟していた




彼は私がいつか死ぬと

知りながら毎日来てくれて

知りながら私を好きと言った




彼も覚悟をしてるんだ




この先に幸せなんて

ありはしないと知っても

こんな私を好きでいる

それを彼は選んでくれた




彼は毎日来てくれた

決して諦めなかった




きっと私達があの時

出会ってしまった時点で

私の死を彼が見る事は

決まってしまっていたんだ




それなら私はせめて

神様がくれたこの

最後の時間を




彼との幸せな記憶で埋めたい














3月6日、くもりのち晴れ




体調は最悪だった

でも私は決して

笑顔を絶やさないと

固く心に誓った




今日彼は約束通り

私の私服を持って

病院に来てくれた




明日は彼の学校が

休みなので昼には

ここへ来るはずだ




いよいよ明日私は

彼と一緒に病院を出る




狭い部屋で数日長く

命を長らえるよりも

彼と過ごす1日の中で

彼との幸せな時間の中で




私は眠りたいと望んだ




どんな結末になっても

もう後悔はしないだろう

私はきっと勇気を持って

最後の日を迎えるだろう




明日私の体がどうなるか

わからないので今のうちに

ここに書いておこうと思います




お父さん、お母さん

今まで本当にありがとう

たくさん困らせてしまって

本当にごめんなさい




明日私は彼と病院を出ます

もちろん彼は何も知りません

外出許可が出たと嘘をつきます




だからどうか彼を

責めないで下さい




私が彼を騙してまで

望んだ最後の一日です

どうかわかって下さい




最後まで迷惑ばかりで

申し訳ない気持ちです




でもお父さんが彼と私を

会わせてくれなかったら

それを想像するだけで

凄く恐ろしくなります




きっと今頃私は悲しさと

惨めさに押しつぶされて

おかしくなっていたはず




最後のわがままを許して下さい

彼を決して責めないで下さい




彼は全然何も知りません

私が騙して連れ出します

彼に罪は全くありません




そして私はきっと

この人生最後の日を




人生最高の幸せの日にします












写真提供:GATAG 著作者:ecowa(著作権放棄)

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2014/03/06 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第十七詩:3月2日、雨のちくもり





3月2日、雨のちくもり 




誰もいない部屋で 

たったひとり 

耳をふさぎ 

目を閉じる 




私はそれでも 

祈り続けた 




今日は散々だった 

お医者さんに見せて 

もらった検査結果も 

酷い内容だったし 




それを証明 

するかのように 

体調も最悪だった 




隣の個室の人は 

今日の昼に亡くなった 

私と同じ病気だった 




お父さんやお母さんの 

心配ないから、という 

言葉にまで反感を持った 




助からないの知ってるくせに 




私の心は荒れていた 

まわりのもの全てに 

悪意を感じていた 




私は昼過ぎからずっと 

自分の個室に閉じこもり 

現実逃避をしていた 




そうしないともう 

自分を保てなかった 




ご飯を食べる元気も 

薬を飲む気力も無い 

何もする気になれず 




ベッドで横になったままだった 




他人の話し声が 

凄く耳障りだった 

人の足音にすら 

心臓が縮み上がった 




また誰か死んだのかと 

憂鬱な気分になるのだ 




両親の言葉も 

お医者さんの言葉も 

もう聞きたくなかった 




検査の結果なんて 

いまさら見たくなかった 

誰かが亡くなるところも 

もう見たくなかった 




ここは末期患者の病棟 




こうなる事は 

わかっていた 

わかっていても 

耐えられなかった 




そして驚いた事に

彼は今日もここへ来た

凄く嬉しいのと同じだけ

つらくてたまらなかった




彼は決して無理に

出て来いとは言わない




「出てくるまで待つから」




そう言って面会時間が

終わるまでずっと

扉の向こうにいた




私は頭から

布団をかぶって

耳をふさぎ

目を閉じた




彼の声を聞くのが

一番苦しかった

一番悲しかった




それでも私は

祈る事をやめはしなかった




彼が私のことを

次の恋でもして

もう忘れてしまうように




そして二度と思い出さないように




私はこれから

死ぬまで毎日

誰もいない部屋で

たったひとり




彼の為に祈り続ける




もう何も見たくなかった

もう何も聞きたくなかった

それでも私は彼の幸せの為に




祈り続けるのをやめはしない




誰もいない部屋で

たったひとり……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3月4日、晴れ




あれから毎日

彼はここへ来ていた

そのたびに私は

ずっと悩んでいた




本当に彼は

底無しのお人好しだ

このままではきっと




私が死ぬまで毎日

ここに来るだろう




「気紛れなんかじゃない

馬鹿みたいだと思うけど

僕は本気なんだ……」




彼は好きだと

告白してくれたあと

確かにそう言っていた




知ってるよそんな事

だからつらいんじゃない




でもこのままだと確実に

私の死を彼は見る事になる

それだと私のしている事は

何の意味も無くなってしまう




私にはもうわかっていた

君が出てくるまで僕は

いつまでも待ってるから

そう彼は言っていた




きっと明日も明後日も

彼は来てくれるだろう




私は彼の幸せを祈る

などと言いながら実は

自己満足に固執してた

だけだったのではないか




嫌なものは見たくない

嫌な事は聞きたくない

それが扉の向こうにいる

彼の為になるだろうか




神様がくれた時間を

彼の為に使うと言いながら

彼の泣くところを

見たくないと言いながら




そして彼の声さえも

聞きたくないと言いながら

結局私は逃げていた

だけだったのではないか




私は彼が帰った後もずっと

自問自答を繰り返していた

きっと明日も明後日も

彼は来てくれるだろう




悩んでる時間は無い

このままだと確実に

私の死を彼は見る事になる

それだと私のしている事は




何の意味も無くなってしまう……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

写真提供;GATAG 著者:Eddi van W.

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2014/03/06 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第十六詩:3月1日、晴れ時々くもり





誰もいない世界で 

たったひとり 

からっぽの 

ブリキの人形は今日も 




大好きな歌をうたいます 




ブリキの人形は 

耳をふさいでうたいます 

ブリキの人形は 

目を閉じてうたいます 




その歌を聴いた人は 

次の歌を聴く頃には 

もうその歌を忘れてます 




そして二度と思い出しません 




それでもブリキの人形は 

自分の口は閉じません 

ブリキの人形は毎日 




大好きな歌をうたいます 




誰もいない世界で 

たったひとり 















3月1日、晴れ時々くもり 




私は本当に馬鹿だ 

どうしようもない 

馬鹿に違いない 




私はあまりにも幸せで 

私はあまりにも不幸だ 




今日から病院生活が始まった 




1日中彼の事ばかり 

ずっと考えていた 

食事も喉を通らない 




個室で本当に良かった 

こんななさけない姿を 

他人になど見せられない 




私は1日中泣いていた 

誰もいない場所で 

たったひとりで 




これで良かったんだって 

何度自分に言い聞かせても 

涙は止まってくれなかった 




私があんまり彼の事ばかり 

考えてしまうものだから 

最初は幻を見たと思った 




間違いなく本物の彼だった 




彼は病院まで

私に会う為に

来てくれたのだ




その瞬間私は自分でも驚く程

凄く幸せな気持ちになって

つい笑顔を見せてしまった




彼が私を見つけて

駆け寄ってくる

私は慌てて涙を

手で拭って彼を見た




笑顔を心の奥にしまい込んで




そして私は冷たく言った

彼にもう来ないでくれと

もうあなたの気紛れに

付き合う余裕なんて無いと




心にも無い言葉を並べる私

苦しくてつらくて悲しい

こんな気持ちになったのは

生まれて初めてだった




お願いだから帰って欲しい

そして私の事は忘れて欲しい

あなたの泣く姿は見たくない

あなただけは幸せになって欲しい




それだけが私の最後の望み




それなのに彼は……

彼は私に向かって

こんな事を言ったのだ




「好きなんだ君が」




一瞬目の前が真っ白になった

時間が止まってしまった

何も考えられなくなっていた

手も足も硬直して動かない




何もかもが満たされてゆく




孤独に震えていた時間も

絶望に泣いていた日々も

死に怯えてた夜でさえも




不安も苦痛も恐怖も

瞬く間に取り払われて

あなたのその言葉が

私の全てを満たしてゆく




こんな幸せが私の人生の

最後に待っていたなんて




私は抵抗するのを諦めた

涙はとめどなく流れ落ちた

彼が見ているのはわかってる

だけどもう隠すのは無理だった




ありがとう

本当に嬉しい

凄く幸せだよ




あなたに逢えて良かった




伝えられないこの想い

あなたはいつだって

底抜けにお人好しで

驚くほど優しい




だからこそ私は

そんなあなたを

絶対に悲しませる

わけにはいかない




私へこんなにも素敵な

気持ちをくれた彼を

もう泣かせたくない

巻き込んではいけない




私の決意は固まった




「うるさい……

うるさい帰れ

もう帰ってよ」




そう言って

振り返りもせずに

私は自分の

個室へ駆け込んで




ドアを閉めた




もう二度と彼と

会わなくなって

彼が自然と私を

忘れてくれれば




それが一番いいのだと信じて




こんな方法でしか

彼の幸せを願えない

私は本当に馬鹿だ

どうしようもない




馬鹿に違いない……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

写真提供:写真素材「足成」様

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2014/03/05 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

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「天国に降る雪」

「想いは流れる」(短編)

「いつだって僕の」

「サン・ミシェルの少女」

「想いは流れる」(長編)

「粉雪と涙」

「君の歌が聞こえる」

「最後の言葉」

「天使の両翼」

「君の歌が聞こえる」(後書き)

「最後に見た景色」

「想いは流れる」(後書き)


「君の歌が聞こえる」は初めて

ブログ部門でも評価頂きました。
 
 

注目記事全国ランキング上位作品

「君の歌が聞こえる」9970人/1位

「3年待ってね」5478人/1位

「アルテミスの弓」6171人/1位

「サン.ミシェルの少女」5377人/1位

「珍しいペット」5365人/1位

「君の歌が聞こえる」5438人/2位

「夢も見ずに」5407人/2位

「消えていく私」5423人/2位

「戦争と平和と愛について」5356人/4位

「冥府に住む聖者」5362人/5位

「天国に降る雪」5351人/5位

「悠久の中の一瞬」5339人/5位

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「無理に笑う人」

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