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2024/05/02

「想いは流れる」第五詩:告白後の涙





僕は悪い夢を見ていた 

僕の声は届かなかった 

彼女の命を奪ったのは 




僕だと気付いてしまった 




風のざわめきの中で 

小鳥達のさえずりの中で 

木漏れ日の煌めきの中で 




微笑みながら君は 

眠り続けていた 




僕の声は届かなかった 

僕は悪い夢を見ていた 

小鳥達のさえずりの中で 

木漏れ日の煌めきの中で 




風のざわめきの中で






 
 
 
 
 
 
 
 
僕の姿を見た彼女は 

笑ったように見えた 




僕は急いで駆け寄ったが 

彼女は笑っていなかった 

僕と視線すらあわせようと 

しないまま冷たい声で言う 




「何しに来たの 

ここ病院よ 




元気な人が 

気軽に出入りして 

いい場所じゃないわ」 




僕は言葉を失った 

ここがどんな場所か 

いくらなんでも 

わからないわけがない 




末期患者の病棟だ 




ここに入った人は 

ほぼ二度と出られない 

死を迎える患者達が 

心を安らげる為の施設 




僕は何をしにここへ 

来たというのだろう 

慰めに来たのか 

励ましに来たのか 




そんな僕へ彼女は 

感情の無い声で言う 




「もう来ないでって

確かに私言ったよね

もう物好きの気紛れに

付き合える様な余裕は




今の私には無いの」




僕はそんな彼女の

言葉をさえぎる様に

自分でも驚くような

言葉を叫んでしまった




「好きなんだ君が」




狭い病院の廊下に

はっきりと僕の声は

響いて消えていった




僕も彼女も

しばらく動けなかった

僕は急に怖くなった

後戻りは出来なかった




僕は自分の気持ちを

確かめるように

言葉を続けた




「気紛れなんかじゃない

馬鹿みたいだと思うけど

僕は本気なんだ……」




僕のなけなしの勇気は

そこで空っぽになった

確かに最初は同情だった

偽善者だと自分でも思う




でも自分の気持ちに

嘘はつけなかった




僕はゆっくりと

床に落としていた

自分の視線を

彼女の方へ向けた




彼女は目を見開き

僕を凝視して

その瞳から大粒の

涙を流していた




その流れ落ちる涙が

どういう意味なのか

確かめる前に

彼女は叫んだ




「うるさい……
 
うるさい帰れ

もう帰ってよ」




振り返りもせずに

彼女は自分の

個室へ駆け込んで

ドアを閉めた




僕は追いかける

勇気が無かった




ただ呆然と

看護師の人が

面会時刻終了を

告げに来るまで




ずっとその場に立ち尽くしていた














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2014/03/02 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第四詩:失った翼





僕は流れのその先に 

向かってたった一人 

目を閉じて語りかける 




天国に行った君の中では 

僕はずっといつまでも 

少年のままなんだろうね 




幸せな夢を見ながら 

眠りについたのだと 

せめて僕は信じたい 




生きている僕は 

一体どうすれば 

いいのだろうか 




この記憶と一緒に 

生きていく覚悟は 

出来てるつもりだ 




僕が犯した罪 




そしてこれからも僕が 

ずっと受け続けていく 




僕への罰 




記憶がゆっくりと 

意識の湖底に沈む 

君のいない世界で 

幸せな夢を見ながら 




そう、君のいない世界で 















昨日の彼女は少し

様子が変な気がした

具体的に何がと言われると

僕にもよくわからないけど




あの娘は笑っていても

心の底から笑ってない

それにはもう気付いてた




それは仕方がないと

僕はそう思っている

軽々しく僕もわかる

なんて言えなかった




小さい頃から彼女は

ほとんど自宅から

出た事がなかった




一度どうしても

海が見たいと

わがままを言って

親を困らせたそうだ




根負けした父親の

車の中であの娘は

激しい発作を起こした




命を取り留めた代わりに

彼女は翼を失った




「二度と部屋から出るなんて

自分から言えなくなったよ」

そう言って彼女は

力無く微笑んで見せた




彼女は再び目を覚ました時

海が見れなかった失望で

最初にこう思ったそうだ




私は何の為に生きてるのだろう




ただ親が泣く顔はもう

見たくないと彼女は言う

その為にこの娘は自らの

翼を自分でもぎ取った




この狭い部屋と

窓から見える風景

それだけが彼女の

世界の全てだった




僕はただ黙って

でも真剣に

彼女の話を

聞き続けていた




それしか出来ない

自分の無力さに

打ちのめされながら




だが昨日の彼女は

いつもと違った




明日何時くらいに来るのとか

当番なんてさぼって早く来い

なんて事は何度も言ってたが




もう来るなと言ったのは初めてだった




僕が彼女の家に

行くようになって

一ヶ月が過ぎていた




もちろんこのままで

良いとはとても思えず

今日も僕は彼女の家に

来てしまっているのだ




なぜ昨日の彼女は

あんな事を言ったのか

それを僕は彼女の

母親の言葉で理解した




今朝彼女は入院したらしい




僕を心配させない為に

あんな事を言った……

なんて自惚れだろうか




そんな事を

考えるよりも早く

僕の足は無意識に




その病院へ向かっていた














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2014/03/01 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(4)

「想いは流れる」第三詩:物好きな偽善者





僕は取り返しの 

付かない事を 

してしまった 




君の笑顔の代償は 

余りにも大きかった 

僕は罰を受けなければ 




目の前の事実が 

氷の冷たさで 

刃となって 

鈍く光る 




その向けられた 

絶望の刃を僕に 

突き刺してくれ 




僕の胸の 

奥底に渦巻く 

罪に届くように 




君の笑顔の代償 

冷たい絶望の刃 

背負った罪と罰 




その痛みに 

耐えられなければ 




そこで全ては終わる












学校の帰りに 

あの娘の家に 

寄り道するのが 

僕の日課になっていた 




「物好きねえあなたって 

毎日よくあきもせずさ」 

天使の笑顔で君は僕に 

そんなひどい事を言う 




しかし用意する 

お菓子とお茶は 

いつも二人分だ 




何を話したかなど 

覚えていなかった 

他愛も無い世間話 

身の回りの出来事 




僕に何か出来るなんて 

思っていなかったけど 




僕は無力だった 




ここに来れば何か

あるかもしれない

なんて妄想だった




僕は物好きでここへ来る

それ以上の人にだなんて

到底なれそうもなかった




つまらない話にも

彼女はよく笑った

少なくとも僕には

楽しそうに見えた




それだけが救いだった




帰りに見送ってくれた

あの娘の母親が庭先で

本当にありがとう、と

泣きながら僕に言った




僕はきっと明日も

ここに来るだろう




偽善者だと僕の中で

僕への声が聞こえる

ちゃんと自覚はある




だけどたとえ偽善でも

しないで家に帰るより

何倍もましだと思った




僕に何か出来るなんて

思っていなかったけど




学校の帰りに

あの娘の家に

寄り道するのが




僕の日課になっていた














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2014/03/01 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第二詩:知らなければ幸せだった





風がくすぐったいなんて 

思ったこともなかった 

世界が輝いているなんて 

思ったこともなかった 




草原で転んで 

痛くないと 

笑っていた 




川の水が 

冷たいと 

驚いていた 




誰もいないところで 

悩んでいるくせに 

誰もいないところで 

泣いているくせに 




それでもあの娘は 

幸せだと笑った 




僕に出来る事なんて 

もう何もなかった 




風がくすぐったいなんて 

思ったこともなかった 

世界が輝いているなんて 

思ったこともなかった 




出逢ってしまったことに 

僕は激しく後悔していた 

出逢わなければきっと 

あの娘は幸せだった 




悩んでいるくせに 

泣いているくせに 

それでもあの娘は 




幸せだと笑った……

 
 
 
 
 
 
 




「私ね、もうすぐ死ぬの 


だから今日は最後の 

誕生日なのよ」 




まるで他人事のように 

淡々とあの娘は言った 




生まれつき心臓が悪く 

長くは生きられない 

そう医者から言われて 

今まで生きてきたそうだ 




僕は何と答えればいいのか 

わからずにただ話を 

聞き続けていた 




あの娘は知りたく 

なかったと言った 

でも聞いてしまった 

病院での検査のあと 




なかなか戻ってこない 

父親を探していた時に 




自分の命があと数ヶ月だと 




偶然聞いてしまった医者の言葉

今でも信じられないそうだ

嘘だと思いたいそうだ

何かの間違いだと




あの娘は何日も悩んで

それから思い切って

聞いてしまったことを

ついに父親に打ち明けた




間違いだと言って欲しかった

全部嘘だと言って欲しかった

でもあの娘は気付いたそうだ




そんなはずないだろう、と

言いながら泣いてしまった




父親の姿を見て




僕に何か出来るとは

とても思えないけど

また来ると約束して

僕は自分の家に戻った




とてもいい誕生日会

だったと僕も思う




きっとあの娘の父親が

せめて最後の記念日は

人を集めて賑やかにと

そう、願ったのだろう




私ね、もうすぐ死ぬの

だから今日は最後の

誕生日なのよ




最後の誕生日




あの娘の言葉が

耳から離れない

今日は僕はもう




眠れそうもなかった














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2014/03/01 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

「想いは流れる」第一詩:最後の誕生日







 








1月21日、くもり 

窓の外にはいつもの時間に 

あの男の子がこの道を通る 




学校の通学路なのだろう 

友達とはしゃぎながら 

やがてその先の交差点を 

左に曲がって行ってしまう 




雨が降らなくて 

本当に良かった 

傘であの子の顔が 

見えなくなるから…… 















最後の誕生日なんて 

おかしな話だと思った 

僕は何のことなのだか 

さっぱりわからなかった 




僕は父さんと二人きり

この街で暮らしている




その父さんが今夜

最後の誕生日会に

出ると言っていた




僕も一緒に行く事になった

夕ご飯を作る人がこの家に

誰もいないからなのだけど




あまり騒いではいけないよ

と、父さんは悲しそうな

笑顔を浮かべてそう言った




最後の誕生日




不思議な言葉だと思った

その意味を僕はなぜか

父さんに聞けなかった




僕の父さんの仕事の

恩人の子供の誕生日

という事だそうだが




僕と同じくらいの歳の

女の子のお祝いらしい




友達になってあげなさい

父さんは僕にそう言って

また悲しそうに笑った




そして僕は

一人の女の子に出会った




初めて見る顔だった

こんなに近くに

住んでいるのに




大勢の人に囲まれて

その娘も同じだった

悲しそうに笑ってた

一生懸命笑っていた




僕はきっとあの娘と

友達にならずには

いられなかったんだ




でもその時の僕は

何も知らなかった




最後の誕生日なんて

おかしな話だと思った

僕は何のことなのだか

さっぱりわからなかった
















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2014/02/28 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

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