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Destination Station of a Dream
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私が本当に必要なものは
この世界には無い
貴方がそうであるように
私にとって本当に大切なものは
この世界には無い
貴方がそうであるように
貴方を守り包みゆく
白き嘘
その痛みが貴方を支えると
私は知っていたから
私が本当に必要なものは
私にとって本当に大切なものは
この胸の内に在った
貴方がそうであるように……
自らの体に巣食う病魔を
妻に告白出来ず
彼の苦悩はずっと続いていた
「そうだ僕に
残された時間はあと少し
言わなければ彼女に
駄目だ
言えない」
彼が自宅に戻ったのは
もう空が漆黒の闇に
包まれた夜遅くだった
それまでの数時間
彼は自分がいったい
どこを歩き回っていたか
それさえも覚えておらず
そして恐らくは
自分が帰宅した事すらも
自覚していないのではないだろうか
家で夫を迎えた妻
だがその美しい顔は
彼同様陰鬱に暗く
深い疑念に囚われている
それでも彼女は
これだけは聞かねばならなかった
「決して隠したりしないで
正直に答えて
あなたの部屋に
こんなものがあったわ」
彼女がそう言って
夫に差し出したものは
薬ビンと注射器だった
彼は今やっと
目が覚めたように目を見開き
彼女の手の中にある物を
凝視したまま硬直してしまった
「お願い正直に答えると誓って
これは
これはいったい何なの?」
彼は妻を
まともに見る事ができず
目を伏せてしまった
そんな彼の様子は
彼女の疑惑を確信に
変えてしまうのに充分だった
「やっぱり
やっぱり
麻薬だったのね」
2014/01/17 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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