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Destination Station of a Dream
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あの時はもう
恋なんてしないと思ってた
だけどまたあなたに
恋をしています
天国にも雪が降る
その白き嘘はゆっくりと
偽りや疑いをも覆い隠し
優しく降り積もっていく
あなたはまるで
雪割りの花のようだった
天国にも雪が降る
頬を叩いていた冷たい風は
やがて背中を押す勇気に変わる
泣き続け立ちすくむ臆病な私の
奪われた未来も
叶うことの無い希望も
弱さも醜さも愛しさも
全てを真っ白に染め上げて
天国にも雪が降る
雪割り草に花が咲く頃
短かく儚き夢は去っていく
無邪気に笑っていた私達に
別れを告げて
あの時はもう
恋なんてしないと思ってた
だけどまたあなたに
恋をしています
恋をしています……
彼が愛する妻を追い出し
自らも家を飛び出してから
いったいどれだけの時間が
過ぎ去った事だろうか
既に彼には夜も昼も無く
眠い時に眠り
起きている時には
寂れた町角に座り込み
気が済むまで酒を飲み
苦しい時は麻薬を打つ
そんな荒み切った毎日を
彼はあの時から
ずっと続けていた
そして彼は夢を見る
自分と美しい妻と
そして産まれるはずだった
子供の三人で毎日を暮らす
彼が望んでもなお
手に入れる事も
叶わなかった
ささやかな未来の夢
今日も彼はまどろみの中で見続ける
やがて彼は目覚める
突然冷たい現実が
いつもの様に彼を迎える
無表情な町並み
突き刺すように痛む身体
そして彼は再び
酒ビンを手に取った
いつも彼はそんな現実から
目を背ける為に酒を飲む
彼は低くうめいた
最後のささやかな望み
その酒ビンまでもが
彼の期待を裏切った
彼が持ち合わせていた
わずかな金も既に
底をついてしまっていた
彼はよろよろと立ち上がった
そのみすぼらしい身なりは
まさに浮浪者そのものだった
ボロボロになった身体を
引きずるようにして
自宅へと向かった
再び彼は低くうめいて
その場に座り込んでしまった
自宅には
彼にとってあまりにも
美しすぎる思い出が
たくさん詰まりすぎていた
美しい花のような
妻との思い出が
彼は自嘲の笑みを浮かべ
再び立ち上がって
自宅へと向かった
全てを捨ててきた彼にとって
妻との思い出そのものである
自宅に戻る事はあまりにも
辛い行為であるはずだった
だがそんな理性や自尊心など
今の彼には既に
もうどうでもいい事だった
彼に今一番必要なのは
辛い現実から
目を背ける為の酒代だった
彼は帰宅の途中
ずっと自嘲の笑みを
浮かべ続けていたが
家に着いた時
彼は泣いていた
失ったものの
あまりの大きさに
そして愛する妻の為に
これで良かったんだ
他に方法はなかった
僕は
僕は間違っていない
彼は自宅の前で
糸の切れた
操り人形のように崩れ落ち
それでもなお
必死になって
そう自分に
言い聞かせてはいたが
止めども無く流れ落ちる涙は
もはや隠しようもなかった
なぜ僕はここに
戻ってきてしまったんだ
こんな気持ちになるのは
わかっていたはずなのに
戻ってくるべきではなかった
あのまま僕はあそこで
死んでいれば良かったんだ
もう二度とここには戻るまい
そう彼が決心して
立ち上がったその時だった
彼の視野の片すみに
信じ難いものが入っていた
庭先に植えていた花
小さな赤いつぼみをつけている
枯れていない
まさか……
彼は震える手で
自宅のドアに手をかけた
2014/01/18 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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