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Destination Station of a Dream
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3月5日、晴れ
どうやら私の
負けみたいだ
今日も彼は
来てくれた
このままでは彼と
全く話せないまま
何の解決もせずに
私の死を彼は見る
たぶんこれ以上
私が意地を張っても
結果は同じなのだろう
本音は会いたいという
気持ちに負けたのかも
しれなかったのだけど
観念して私はドアを開け
廊下にいる彼に会った
彼は私を見ると
笑顔で歩み寄る
嬉しくて少しだけ
くやしかったかも
また私は憎まれ口
本当は喜んでるくせに
「あなたって馬鹿なのか
よっぽど暇なのね」
彼はにっこり笑って
いつものように答える
「どうもそうみたいだ」
それからの私は
もう止まらなかった
彼の優しい笑顔が
私の目の前にある
それだけで私の心は
瞬く間に満たされた
神様がくれた最後の時間
あなたがくれた最後の時間
この空白の数日間を
取り戻すかのように
私はたくさん笑った
彼は魔法使いみたいだ
昨日まであんなに
病んで荒んでいた私を
瞬く間に笑顔にした
きっとこれは
彼もそして私も
二人が望んだ
結末だったんだ
私は病院服が気に入らない
という事にして彼に家から
私服を持ってきて欲しいと
お願いをした
このお願いはきっと
死神の渡す契約書に
サインする事になる
そう私は覚悟していた
彼は私がいつか死ぬと
知りながら毎日来てくれて
知りながら私を好きと言った
彼も覚悟をしてるんだ
この先に幸せなんて
ありはしないと知っても
こんな私を好きでいる
それを彼は選んでくれた
彼は毎日来てくれた
決して諦めなかった
きっと私達があの時
出会ってしまった時点で
私の死を彼が見る事は
決まってしまっていたんだ
それなら私はせめて
神様がくれたこの
最後の時間を
彼との幸せな記憶で埋めたい
3月6日、くもりのち晴れ
体調は最悪だった
でも私は決して
笑顔を絶やさないと
固く心に誓った
今日彼は約束通り
私の私服を持って
病院に来てくれた
明日は彼の学校が
休みなので昼には
ここへ来るはずだ
いよいよ明日私は
彼と一緒に病院を出る
狭い部屋で数日長く
命を長らえるよりも
彼と過ごす1日の中で
彼との幸せな時間の中で
私は眠りたいと望んだ
どんな結末になっても
もう後悔はしないだろう
私はきっと勇気を持って
最後の日を迎えるだろう
明日私の体がどうなるか
わからないので今のうちに
ここに書いておこうと思います
お父さん、お母さん
今まで本当にありがとう
たくさん困らせてしまって
本当にごめんなさい
明日私は彼と病院を出ます
もちろん彼は何も知りません
外出許可が出たと嘘をつきます
だからどうか彼を
責めないで下さい
私が彼を騙してまで
望んだ最後の一日です
どうかわかって下さい
最後まで迷惑ばかりで
申し訳ない気持ちです
でもお父さんが彼と私を
会わせてくれなかったら
それを想像するだけで
凄く恐ろしくなります
きっと今頃私は悲しさと
惨めさに押しつぶされて
おかしくなっていたはず
最後のわがままを許して下さい
彼を決して責めないで下さい
彼は全然何も知りません
私が騙して連れ出します
彼に罪は全くありません
そして私はきっと
この人生最後の日を
人生最高の幸せの日にします
写真提供:GATAG 著作者:ecowa(著作権放棄)
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2014/03/06 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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