[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- Newer : 「想いは流れる」第十七詩:3月2日、雨のちくもり
- Older : 「想いは流れる」第十五詩:2月23日、くもりのち雨
Destination Station of a Dream
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
誰もいない世界で
たったひとり
からっぽの
ブリキの人形は今日も
大好きな歌をうたいます
ブリキの人形は
耳をふさいでうたいます
ブリキの人形は
目を閉じてうたいます
その歌を聴いた人は
次の歌を聴く頃には
もうその歌を忘れてます
そして二度と思い出しません
それでもブリキの人形は
自分の口は閉じません
ブリキの人形は毎日
大好きな歌をうたいます
誰もいない世界で
たったひとり
3月1日、晴れ時々くもり
私は本当に馬鹿だ
どうしようもない
馬鹿に違いない
私はあまりにも幸せで
私はあまりにも不幸だ
今日から病院生活が始まった
1日中彼の事ばかり
ずっと考えていた
食事も喉を通らない
個室で本当に良かった
こんななさけない姿を
他人になど見せられない
私は1日中泣いていた
誰もいない場所で
たったひとりで
これで良かったんだって
何度自分に言い聞かせても
涙は止まってくれなかった
私があんまり彼の事ばかり
考えてしまうものだから
最初は幻を見たと思った
間違いなく本物の彼だった
彼は病院まで
私に会う為に
来てくれたのだ
その瞬間私は自分でも驚く程
凄く幸せな気持ちになって
つい笑顔を見せてしまった
彼が私を見つけて
駆け寄ってくる
私は慌てて涙を
手で拭って彼を見た
笑顔を心の奥にしまい込んで
そして私は冷たく言った
彼にもう来ないでくれと
もうあなたの気紛れに
付き合う余裕なんて無いと
心にも無い言葉を並べる私
苦しくてつらくて悲しい
こんな気持ちになったのは
生まれて初めてだった
お願いだから帰って欲しい
そして私の事は忘れて欲しい
あなたの泣く姿は見たくない
あなただけは幸せになって欲しい
それだけが私の最後の望み
それなのに彼は……
彼は私に向かって
こんな事を言ったのだ
「好きなんだ君が」
一瞬目の前が真っ白になった
時間が止まってしまった
何も考えられなくなっていた
手も足も硬直して動かない
何もかもが満たされてゆく
孤独に震えていた時間も
絶望に泣いていた日々も
死に怯えてた夜でさえも
不安も苦痛も恐怖も
瞬く間に取り払われて
あなたのその言葉が
私の全てを満たしてゆく
こんな幸せが私の人生の
最後に待っていたなんて
私は抵抗するのを諦めた
涙はとめどなく流れ落ちた
彼が見ているのはわかってる
だけどもう隠すのは無理だった
ありがとう
本当に嬉しい
凄く幸せだよ
あなたに逢えて良かった
伝えられないこの想い
あなたはいつだって
底抜けにお人好しで
驚くほど優しい
だからこそ私は
そんなあなたを
絶対に悲しませる
わけにはいかない
私へこんなにも素敵な
気持ちをくれた彼を
もう泣かせたくない
巻き込んではいけない
私の決意は固まった
「うるさい……
うるさい帰れ
もう帰ってよ」
そう言って
振り返りもせずに
私は自分の
個室へ駆け込んで
ドアを閉めた
もう二度と彼と
会わなくなって
彼が自然と私を
忘れてくれれば
それが一番いいのだと信じて
こんな方法でしか
彼の幸せを願えない
私は本当に馬鹿だ
どうしようもない
馬鹿に違いない……
写真提供:写真素材「足成」様
詩・ポエム ブログランキングへ
にほんブログ村 ←良い記事と思って頂けた方、宜しければクリックお願いします
2014/03/05 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
COMMENT
COMMENT FORM