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Destination Station of a Dream
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僕は悪い夢を見ていた
僕の声は届かなかった
彼女の命を奪ったのは
僕だと気付いてしまった
風のざわめきの中で
小鳥達のさえずりの中で
木漏れ日の煌めきの中で
微笑みながら君は
眠り続けていた
僕の声は届かなかった
僕は悪い夢を見ていた
小鳥達のさえずりの中で
木漏れ日の煌めきの中で
風のざわめきの中で
僕の姿を見た彼女は
笑ったように見えた
僕は急いで駆け寄ったが
彼女は笑っていなかった
僕と視線すらあわせようと
しないまま冷たい声で言う
「何しに来たの
ここ病院よ
元気な人が
気軽に出入りして
いい場所じゃないわ」
僕は言葉を失った
ここがどんな場所か
いくらなんでも
わからないわけがない
末期患者の病棟だ
ここに入った人は
ほぼ二度と出られない
死を迎える患者達が
心を安らげる為の施設
僕は何をしにここへ
来たというのだろう
慰めに来たのか
励ましに来たのか
そんな僕へ彼女は
感情の無い声で言う
「もう来ないでって
確かに私言ったよね
もう物好きの気紛れに
付き合える様な余裕は
今の私には無いの」
僕はそんな彼女の
言葉をさえぎる様に
自分でも驚くような
言葉を叫んでしまった
「好きなんだ君が」
狭い病院の廊下に
はっきりと僕の声は
響いて消えていった
僕も彼女も
しばらく動けなかった
僕は急に怖くなった
後戻りは出来なかった
僕は自分の気持ちを
確かめるように
言葉を続けた
「気紛れなんかじゃない
馬鹿みたいだと思うけど
僕は本気なんだ……」
僕のなけなしの勇気は
そこで空っぽになった
確かに最初は同情だった
偽善者だと自分でも思う
でも自分の気持ちに
嘘はつけなかった
僕はゆっくりと
床に落としていた
自分の視線を
彼女の方へ向けた
彼女は目を見開き
僕を凝視して
その瞳から大粒の
涙を流していた
その流れ落ちる涙が
どういう意味なのか
確かめる前に
彼女は叫んだ
「うるさい……
うるさい帰れ
もう帰ってよ」
振り返りもせずに
彼女は自分の
個室へ駆け込んで
ドアを閉めた
僕は追いかける
勇気が無かった
ただ呆然と
看護師の人が
面会時刻終了を
告げに来るまで
ずっとその場に立ち尽くしていた
写真提供:写真素材「足成」様
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2014/03/02 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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