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Destination Station of a Dream
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本当に僕が馬鹿だった
そうとしか思えなかった
確かに、駅のホームから
見えた海は近くに感じた
恐らく20分も歩けば
たどり着ける距離だなと
10分歩いてなぜ
終点の駅が海まで
届いていないのか
すぐに思い知った
目の前は崖だった
森に隠れて見えなかった
どうやら海まで行くには
ずっと西まで森を抜けて
遠回りしなければ駄目だ
引き返そうか、と
僕が言うと彼女は
泣きそうな視線で
僕を見つめ返した
でもそれは彼女が
わがままを通す為に
演技をしているわけでは
無いと僕もわかっていた
今まで何度も引き返そうと
言い続けているうちに
気が付いてしまった
「戻ろうか」
この言葉は彼女にとって
人生で初めて見る夢の
終わりを意味してたのだ
本当に甘いな僕は
そう思ったけれど
「……もう少しだけなら
先に進んでみてもいいよ
あの海の方面に降りられる
場所があるかもしれないし」
その言葉に彼女は
本当に嬉しそうに笑う
だが僕が馬鹿だった
そうとしか思えなかった
30分後にはどっちが海か
どっちが駅かもわからなく
なってしまっていたのだ
これはまずいと彼女に
借りた携帯の画面には
「圏外」の文字が浮かぶ
僕は取り返しの
つかないことを
してしまったかも
しれないと思った
3月になったとはいえ
夜や明け方の冷え込みは
まだかなり厳しいはずだ
僕には問題が無くても
彼女はそうはいかない
最悪の予感が頭をよぎる
考えたくも無い最悪の予感が
だが当の本人は
全く落ち込んだ
様子が無かった
たくさん話しながら
楽しそうに森の中を
軽やかに歩いていく
病気だなんて嘘みたいに
世界って眩しいね
風がくすぐったい
そう言いながら
僕の方へ振り向いて
幸せそうに笑っていた
風がくすぐったいなんて
思ったこともなかった
世界が輝いているなんて
思ったこともなかった
草原で転んで
痛くないと
笑っていた
川の水が
冷たいと
驚いていた
誰もいないところで
悩んでいるくせに
誰もいないところで
泣いているくせに
それでもあの娘は
幸せだと笑った
僕に出来る事なんて
もう何もなかった
風がくすぐったいなんて
思ったこともなかった
世界が輝いているなんて
思ったこともなかった
出逢ってしまったことに
僕は激しく後悔していた
出逢わなければきっと
あの娘は幸せだった
少なくともこんな
酷く寂しい場所で
死に怯えなくても
済んだはずだった
悩んでいたくせに
泣いていたくせに
それでもあの娘は
幸せだと笑った
陽は西へ大きく傾き
無慈悲な夜の到来を
僕たちに告げていた……
写真撮影者:サヤキ
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2014/03/03 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)
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