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2024/11/22

「想いは流れる」第十詩:罪と罰





どうやらここは

自然公園らしい




舗装されていない

駐車場の奥に何か

小さな建物が並ぶ




最初はトイレで夜を

明かす事になるかと

思ったのだが幸いにも

休憩施設が備わってた




トイレは窓もドアも無く

吹きさらしの建物だった

だけどその休憩施設には

外気を遮断する窓もある




入り口の床が地面だった

拾ってきた木や草もある




そこで僕は木と草を積み

奥の喫煙室から拝借した

ライターで着火し暖を取る




何とか僕たちは助かった様だ




僕がそうしている間

あの娘はずっと椅子に

座って何かを書いていた




日記だと言って彼女は

照れくさそうに笑った




彼女が持っていた

肩掛けのバックには

日記が入っていたのだ




眠る前に彼女は

その日記を絶対に

見ないでねと僕に

何度も念を押した




信用が無いんだなあと

僕が言ったら彼女は

笑いながらこう言った 




「信用してるよ」




僕はその夜眠らなかった

火を絶やさないように

たくさん出る白い煙が

部屋にこもらないように




翌日の朝早くに

彼女は目を覚ました

そして僕を見て

柔らかく微笑んだ 




「何とか夜を越せたね

君が厚着だったのも

良かったんだと思う」




僕がそう言うと

悪戯っ子の様な

表情で白状した




「当然だよ

だって計画的

犯行だったからね」




僕は呆気に取られて

何も言えなかった




最初からこの娘は

すぐ帰るつもりなど

全く無かったのだ




「ごめんね

でも本当にありがとう」




彼女はそう言いながら

僕の文句から逃げる様に

ドアを開けて外に出て





そこで突然倒れた





悪い冗談かと思って

僕は彼女に呼びかけた

だが彼女は動かなかった




慌てて彼女を

抱きかかえたが

息をしていなかった

脈らしきものも感じない




世界が暗転した




僕は悪い夢を見ていた 

僕の声は届かなかった 

彼女の命を奪ったのは 




僕だと気付いてしまった 




風のざわめきの中で 

小鳥達のさえずりの中で 

木漏れ日の煌めきの中で 




微笑みながら君は 

眠り続けていた 




僕の声は届かなかった 

僕は悪い夢を見ていた 

小鳥達のさえずりの中で 

木漏れ日の煌めきの中で 




風のざわめきの中で 




「ごめんね

でも本当にありがとう」




君の最後の言葉が

僕の胸を深く抉った

無理にでも彼女を

止めるべきだった




世界が急速に色褪せてゆく




僕は取り返しの 

付かない事を 

してしまった 




君の笑顔の代償は 

余りにも大きかった 

僕は罰を受けなければ 




目の前の事実が 

氷の冷たさで 

刃となって 

鈍く光る 




その向けられた 

絶望の刃を僕に 

突き刺してくれ 




僕の胸の 

奥底に渦巻く 

罪に届くように 




君の笑顔の代償 

冷たい絶望の刃 

背負った罪と罰 




その痛みに 

耐えられなければ 




そこで全ては終わる……
 
 
 
 
 
 





 
 
 

写真提供:GATAG PublicDomainPictures(著作権放棄)

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2014/03/03 散文詩:連作で小説に近い詩 Comment(0)

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